IEDM2025発表 MRAM最新技術動向 ― 車載とエッジAI応用、高信頼性メモリ革新が切り拓く次世代半導体の未来

IEDM2025 半導体情報
Source IEDM 2025 https://www.ieee-iedm.org/

 IEDM2025で発表されるMRAM最新技術動向を解説。車載向け高信頼性eMRAM、磁気免疫性強化、ダブルスピントルクMTJ、第2世代SOT‑MRAMを紹介。RRAM分野と共にFinFET互換構造、BJT組込み駆動、AI推論CIMマクロ、強誘電接合とCBRAM融合技術を取り上げ、次世代半導体メモリの未来を展望します。

半導体デバイス国際学会 IEDM2025 に見るMRAM最新動向

 2025年12月6日から10日まで開催される、世界最高峰の半導体デバイス国際学会 IEDM2025 (International Electron Devices Meeting) が開幕した。毎年、最前線の半導体デバイス研究成果が発表される場であり、今年も先端ロジック、メモリ、パッケージング、パワー半導体などの最新技術が注目を集めている。
 本稿では、その中でも近年注目度が高まっている MRAM(磁気抵抗メモリ) に焦点を当てる。

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MRAM(磁気抵抗メモリ)とは

 MRAMは電子のスピンと磁気抵抗効果を利用して情報を記録する次世代メモリである。従来のDRAMやフラッシュメモリと異なり、以下の特性を兼ね備える。

  • 不揮発性:電源を切ってもデータ保持
  • 高速性:SRAM並みの読み書き速度(数ns)
  • 高耐久性:書き換え回数は10¹⁵回以上
  • 低消費電力:リフレッシュ不要、書き込みエネルギーが小さい
  • 高温動作:車載環境でも安定

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MRAMが車載向けに注目される理由

  1. 高温環境での安定性
  2. 不揮発性と高速性の両立
  3. 高耐久性
  4. 具体的メリット(ECU、ADAS、自動運転、OTA更新)

MRAMの技術ロードマップ

世代特徴課題主な発表企業・研究
第1世代 STT-MRAM商用化済み。スピン偏極電流でMTJ磁化反転。書き込み電流が大きく、大容量化に制約。Everspin、Samsung、TSMC
第2世代 SOT-MRAMスピン軌道トルクで磁化反転。書き込み/読み出し分離。材料開発、量産工程の複雑化。TSMC、IBM-Samsung
第3世代 VC-MRAM電圧駆動でスピン制御。薄膜化で実現。研究段階、保持特性の検証不足。学術研究中心
MRAM roadmap
MRAMのロードマップ。現在車載向けに商用化されているのは、第1世代のSTT-MRAM。現在第2世代のSOT-MRAMの研究開発が精力的に進行中。将来的には、電圧駆動の第3世代VC-MRAMが望まれる。

IEDM 2025でのMRAM発表

 それでは、IEDMでのMRAMについて見てみましょう。
 MRAMはRRAMと合同でセッション39にて発表される。MRAMRRAMの両分野における最先端研究を網羅する構成で、計8件の発表が行われる。前半はMRAMに関する4件で、自動車用途の高信頼eMRAM、磁気免疫性強化、ダブルスピントルクMTJによる効率改善、第2世代SOT‑MRAMなどが焦点。後半はRRAMに関する4件で、FinFET互換の超高密度RRAM、BJT組込みによるハイブリッド駆動、AI推論向けCIMマクロ、強誘電トンネル接合とCBRAMのハイブリッド構造が取り上げられる。全体として「高信頼性」「低電圧」「高密度」「AI時代への適合性」が共通テーマとなる。

MRAM関連(39‑1〜39‑4)

39‑1: 8nm 128Mb Embedded STT‑MRAM for Automotive(Samsung)

  • 概要: 自動車グレード対応の8nm eMRAMを提示。過酷環境での信頼性を重視。
  • 主要数値: セルサイズ0.017 μm²、128Mb容量、動作温度 −40℃〜150℃、WERサブppm。
  • 成果: 高温・低温環境でも安定した書き込み/読み出しを実現。
  • 技術的要点: MTJスタック最適化、ピン層改良、統合プロセスによる低故障率。
  • 示唆と課題: 自動車用途に必要な信頼性を満たすが、さらなるスケーリング時の保持特性が課題。

39‑2: Wafer‑level Magnetic Shielding for STT‑MRAM(Samsung)

  • 概要: IoT/エッジ環境での磁気免疫性を強化する新しいシールド技術。
  • 主要数値: BEOL工程にソフト磁性材料を統合。
  • 成果: パッケージレベルではなくウェハレベルで磁場耐性を確保。
  • 技術的要点: 近接配置による磁場遮蔽、BEOL統合の工程適合性。
  • 示唆と課題: IoT応用に有効だが、量産時の追加工程コストや材料安定性が課題。

39‑3: Double Spin‑torque MTJs for Cache(IBM–Samsung)

  • 概要: DS‑MTJによる効率改善とキャッシュ用途への適合性を検証。
  • 主要数値: 単一MTJ比で25%効率改善、4kデバイスで2ns書き込み、活性化エネルギー約60kT。
  • 成果: 高速書き込みと安定したWER特性を実証。
  • 技術的要点: 二重参照層の反平行配置、自由層設計の最適化。
  • 示唆と課題: 高性能キャッシュ応用に有望だが、量産時の複雑なスタック制御が課題。

39‑4: Field‑free Type‑C SOT‑MRAM(TSMC)

  • 概要: 外部磁場不要の新型Type‑C SOT‑MRAMを提案。
  • 主要数値: 書き込みパルス1ns、熱安定性>70kBT、セルサイズ48%縮小、スイッチング電流25%削減。
  • 成果: 高速・低電力動作を8kbアレイで実証。
  • 技術的要点: 円形MTJによる磁気異方性設計、フィールドフリー動作。
  • 示唆と課題: 高性能・低コスト応用に有望だが、長期保持と大規模アレイでの均一性が課題。
出典:東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/05/press20250520-01-mram.html

RRAM関連(39‑5〜39‑8)

39‑5: Ultra High Density 1D1R FinFET Dielectric RRAM(NTHU + TSMC)

  • 概要: 5nm FinFET CMOS互換の超高密度RRAMを提示。
  • 主要数値: セルサイズ0.02 μm²、1D1R構造、FinFET Schottkyダイオード内蔵。
  • 成果: 高速スイッチング、低電圧動作、優れた信頼性。
  • 技術的要点: FinFET互換プロセス、超小型セル設計。
  • 示唆と課題: 3nm以降にも適用可能だが、セル間干渉や保持特性の検証が必要。

39‑6: Hybrid‑Driven RRAM with Self‑Aligned Isolation(Peking Univ. + YanXin + ICEM)

  • 概要: BJT機能を組み込んだハイブリッド駆動RRAM。
  • 主要数値: 記録密度36.76Mb/mm²(28nm)、47.62Mb/mm²(FinFET)、耐久>10⁵、保持>10年@125℃。
  • 成果: 高密度化と信頼性を両立。
  • 技術的要点: セル内BJTによるRESET電流増強、DTIによる電気的分離。
  • 示唆と課題: 高密度組込み用途に有望だが、工程複雑化とコスト増が課題。

39‑7: 3D Vertical RRAM‑Based CIM Macro(NYCU)

  • 概要: 2T16R構造による3D垂直RRAMを用いたCIMマクロ。
  • 主要数値: 1kb CIMマクロ、140MHz動作、3bit/cell、AI推論精度MNIST 97.45%、CIFAR‑10 84.28%、72.9TOPS/W。
  • 成果: 高効率AI推論アクセラレータを実現。
  • 技術的要点: 垂直MIM構造、低電圧SET/RESET、非破壊読み出し。
  • 示唆と課題: AI応用に有望だが、大規模化時の歩留まりと熱安定性が課題。

39‑8: FTJ/CBRAM Hybrid Memory(POSTECH)

  • 概要: 強誘電トンネル接合とCBRAMを融合したハイブリッドメモリ。
  • 主要数値: On/Off比>10⁵、電流密度>10⁴ A/cm²、保持>10年、耐久>10⁹、3bit動作。
  • 成果: 高性能・高信頼のマルチビットストレージを実証。
  • 技術的要点: 原子スケールギャップでの分極制御、Cuフィラメント均一化。
  • 示唆と課題: 高密度3D統合に有望だが、量産時の材料制御と工程安定性が課題。

IEDM総括

  • MRAMは自動車・IoT用途での信頼性強化、磁気免疫性改善、キャッシュ応用、低電力化が進展し、韓国サムスンが大きく前進。キオクシア、HynixはMRAM共同研究を進めているが、今年は両社からの発表はなし。
  • TSMCから第2世代SOT-MRAMが発表され、TSMCの今後の注目したい。TSMCはMRAMに注目しており、エッジAIに向けて取り組んでいる。
  • RRAMも、MRAMと同様にエッジAI向けに着目されており、はFinFET互換性、セル構造革新、AI推論応用、ハイブリッド設計に親和性があり、より高密度化が注目への発展が期待される。
  • 両技術とも「低電圧・高信頼・高密度」を軸に、次世代ロジック・ストレージ・AI応用への適合性を示す。

まとめ

 MRAMは現状課題を有しながらもDRAM、フラッシュメモリと比べて高温安定動作するため、車載向けに商用化が進んでおり、韓国勢を中心に研究開発が進んでいる。さらなる商用化のためには第2世代SOT-MRAM、第3世代VC-MRAMが待たれるが、いち早くTSMCがSOT-MRAMを発表した。
エッジAIとしてMRAMは注目されるが、RRAMも同様に注目される。フラッシュメモリでは追随できない低消費電力、高速動作、高温動作の安定性の優位性で、さらなる応用が期待される。

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