中国企業がH200爆買いで中国政府激怒|NVIDIA”全額前払い”要求とTSMC増産が示す供給逼迫の実態と最新動向を解説

Nvidia-TSMC-chinaの関係 半導体情報

 中国企業のH200爆買いで中国政府が激怒。NVIDIAが異例の全額前払い要求を突きつけ、TSMCは増産に踏み切る事態に。急拡大する中国AI市場で何が起きているのか、供給逼迫の背景と最新動向をわかりやすく解説する。H200の性能比較や各社の調達戦略も踏まえ、2026年のAIサプライチェーンを読み解くための必読ガイド。

2025年末から2026年1月初旬にかけて、H200をめぐるNVIDIA・TSMC・中国の動きが一気に噴き出した。

 中国企業の“爆買い”NVIDIAの“全額前払い要求”TSMCの“増産決定”、そして中国政府の“発注停止要請”。この短期間に起きた一連の出来事は、AIサプライチェーンの地政学リスクを一気に可視化し、2026年のAI競争の主役をH200へと押し上げた。

 中国のAI産業はいま、NVIDIAのH200という1つの半導体を中心に動いている。Blackwell世代の1世代前でありながら、中国で合法的に入手できる最高性能GPUという立ち位置が、このチップを“狂騒の主役”へと押し上げた。AI競争の勝敗は、H200をどれだけ確保できるかで決まると言っても過言ではない。(参考資料は、最後部に記載)

中国企業がH200を200万個以上発注した理由

 中国企業はH200を200万個以上発注したと言われる。1個あたり約27,000ドル、総額にして540億ドル(約8.5兆円)。これは単なる調達ではなく、AI競争の行方を左右する“戦略的備蓄”だ。

 報道で名指しされているのはAlibabaByteDanceで、それぞれ20万個超を発注。ByteDanceは2026年にH200へ1000億元(約2兆円)を投じる計画を持ち、動画生成AIやレコメンドAIの強化に本気で踏み込んでいる。

 残りの160万個以上は、Tencent、Baidu、JD.com、Meituan、SenseTimeなどの大手が分担しているとみられる。Tencentはクラウド最大手として40〜60万個規模、BaiduはERNIE向けに30〜50万個規模、その他の企業もAIインフラ拡張のために大量のH200を押さえている。中国のインターネット大手が総動員してGPUを買い漁っている構図だ。

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H200の価格・性能・供給量:なぜここまで欲しがるのか

 H200がここまで求められる理由は明確だ。まず性能。中国向けH20の約6倍という圧倒的な処理能力を持ち、Blackwell(B100/B200)が輸出不可の現状では、中国で合法的に入手できる最高性能GPUとなる。

 価格は1個約27,000ドル、8チップモジュールで150万元(約3,000万円)。非正規市場の175万元以上と比べて約15%安く、性能と価格のバランスが極めて魅力的だ。

 しかし供給は完全に不足している。NVIDIAの在庫は70万個しかなく、200万個以上の発注に対して130万個以上が不足。このギャップが、前例のない取引条件を生んだ。

NVIDIAが突きつけた“全額前払い”という異例の条件

 H200の注文に対してNVIDIAは、通常の半導体取引ではまず見ない条件を提示した。キャンセル不可、返金不可、構成変更不可の“全額前払い”である。

 背景には、中国政府の輸入承認が不透明であること、そして異常な発注量に対応するためTSMCに増産を依頼する必要があることがある。NVIDIAは中国市場を維持したいが、政治リスクは負いたくない。そこでリスクをすべて顧客側に転嫁したというわけだ。

TSMCとの関係:H200増産で深まる“運命共同体”

 NVIDIAはH200の増産をTSMCに正式に依頼し、2026年の第2四半期以降に追加生産ラインが稼働する見込みだ。数量は非公開だが、AIラインはフル稼働が続くとみられる。

 NVIDIAのCEOは「TSMCとのビジネスにとって大きな一年になる」と語り、AI半導体の需要が依然として爆発的であることを示唆した。NVIDIAのAI戦略はTSMCの製造能力に依存しており、H200の増産は両社の結びつきをさらに強固にする。

中国政府の動き:発注停止要請と国産チップ義務化

 中国政府は国内テック企業に対し、H200の新規発注停止を求めている。国産AIチップ(Huawei Ascend)への移行を促す狙いがあり、米国製チップの“駆け込み買い”を抑制したい意図もある。

 軍・政府・インフラ用途ではH200の使用は禁止され、商業用途のみ限定的に許可される方向だ。ただし、中国政府は公式に輸入承認を出すことはなく、NVIDIAのCEOは「注文が通ること自体が承認のサイン」と語っている。つまり、中国政府は“黙認方式”で輸入をコントロールしている。

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米国の立場:輸出許可しつつ慎重審査

 米国はH200の対中輸出を許可しているが、輸出ライセンス審査は継続中で承認時期は不明。政治的には許可、実務では慎重という二重構造だ。

H200・H20・Blackwell(B100/B200)性能比較表

項目H20
(中国向け制限モデル)
H200(中国で合法的に買える最高性能)Blackwell B100/B200
(最新世代・輸出不可)
アーキテクチャHopper(制限版)Hopper強化版(HBM3e)Blackwell
FP8性能約1,000 TFLOPS約4,000 TFLOPS(H20比6倍)B100:~20,000 TFLOPS
FP16性能約500 TFLOPS約2,000 TFLOPSB100:~10,000 TFLOPS
HBM容量96GB141GB192GB
メモリ帯域~3.0 TB/s~4.8 TB/s~8 TB/s
NVLink制限ありフルサポート新NVLink(帯域大幅増)
消費電力~350W~700W~1000W級
中国での入手性◎(商業用途のみ)

 H200は性能・価格・合法性のバランスが最も良い“唯一の選択肢”であり、これが200万個の爆買いにつながった。

H200ショックが示すもの

 H200をめぐる争奪戦は、単なる半導体の話ではない。NVIDIA、TSMC、中国企業、中国政府、米国──すべてを巻き込んだ、地政学的サプライチェーン戦争の中心にある。

 中国企業は200万個以上を押さえ、NVIDIAは全額前払いでリスクを回避しつつTSMCに増産を依頼し、中国政府は国産チップ義務化へ舵を切り、米国は輸出を許可しながらも慎重に監視している。

 2026年のAI競争は、H200をどれだけ確保できるかで決まる。この構図は、今後のAI覇権争いを読み解くうえで避けて通れないテーマになっていく。


参考資料
エヌビディア、中国企業のH200発注に全額前払い要求
中国政府、国内テック企業にAI半導体H200の発注停止要請
H200の中国輸入承認、注文が合図に=エヌビディアCEO
エヌビディア、中国需要でTSMCにH200増産を要請

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