AI需要の急拡大でメモリ特需が本格化する中、アプライド・マテリアルズはSK hynixとMicronと共同開発を強化し、HBM・DRAM・先端パッケージングの技術革新を加速している。EPICセンターにはSamsungも参加し、装置メーカーとメモリ大手が一体となって次世代技術を市場投入へと前倒しする動きが進む。メモリ関連装置は新たな成長源として存在感を高めている。
AIブームで“メモリ特需”が本格化:装置メーカーが一斉に動き出した理由
AI需要の爆発が、ついに半導体装置メーカーの業績を大きく押し上げ始めた。特にメモリ分野は、これまでの景気循環型ビジネスから一転し、AIインフラ投資の波に乗って“成長エンジン”として存在感を増している。
その象徴が、アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)によるMicron、SK hynixとの相次ぐ協業強化だ。AIやHPC向けの次世代DRAM・HBMの開発を、顧客と装置メーカーが“同じ屋根の下”で進める時代に入った。
EPICセンターを軸に加速する「共同開発」モデル
アプライドは3月10日、SK hynixと長期協業を結び、DRAMとHBMの開発を加速すると発表した。研究拠点となるのは、同社が新設したEPIC(Equipment and Process Innovation and Commercialization)センター。ここでは材料開発、プロセス統合、3D先端パッケージングまで、メモリの根幹技術を顧客と共同で磨き上げる。
Micronとの協業も同様で、DRAM・HBM・NANDを対象に、EPICセンターとMicronのボイジー拠点を連携させる。さらに2月にはSamsungもEPICセンターへの参加を表明しており、主要メモリメーカーが勢揃いする“共同開発ハブ”へと進化しつつある。
背景には、Google、Microsoft、OpenAIなどが2026年に6,300億ドル規模のAIインフラ投資を計画しているという事実がある。AIサーバー1台あたりのHBM搭載量は増える一方で、メモリメーカーは技術開発のスピードを落とす余裕がない。装置メーカーと手を組むのは必然だ。
メモリが装置メーカーの“稼ぎ頭”に返り咲く
アプライドの決算を見ると、FY26第1四半期(FY25第4四半期)の半導体システム売上に占めるDRAM比率は34%。前四半期の28%から大きく伸びた。
同社が挙げる成長領域は明確だ。
- DRAM:4F²、3D DRAM
- Advanced Packaging:HBM、ハイブリッドボンディング、パネル基板
- NAND:層数増加と技術移行
- ICAPS:SiC、GaNなどの化合物半導体、フォトニクス
※ICAPS:Industrial(産業)、Consumer(民生)、Automotive(車載)、Power(電源)、Sensors(センサー)向けの非先端ロジック領域の総称。装置メーカーにとって安定需要の柱。
Lam Researchも同様で、12月期のDRAM売上比率は23%と前期の16%から急回復。
東京エレクトロン(TEL)もSPE新規装置売上におけるDRAM比率が、FY2026のQ1=26% → Q2=27% → Q3=36%と着実に戻している。
※SPE(Semiconductor Production Equipment):半導体製造装置の総称。TELの主要事業区分。
なぜ今、メモリ装置が“熱い”のか
理由はシンプルで、AIが求めるメモリ量と帯域が桁違いだからだ。
- HBMはAIサーバーの“ボトルネック解消”に不可欠
- DRAMは微細化限界に近づき、材料・プロセス革新が必須
- 3D DRAMや新構造への移行で装置投資が増える
- 先端パッケージングは装置メーカーの新たな収益源に
つまり、メモリ技術の進化=装置メーカーの売上に直結する構造が強まっている。
まとめ:AI時代の主役はロジックだけではない
AI半導体といえばGPUや専用アクセラレータが注目されがちだが、実際にはメモリこそがAIインフラの“真のボトルネック”になっている。
その結果、メモリメーカーと装置メーカーの関係はこれまで以上に密接になり、共同開発のスピードも上がっている。
2026年以降、メモリ装置市場は“景気循環”ではなく“構造的成長”へと変わる可能性が高い。
EPICセンターを中心に、メモリ技術の進化はさらに加速していくだろう。
参考資料
・Applied Materials forges partnerships with Micron and SK Hynix for AI memory chips
・Applied Materials and Micron Partner To Advance U.S. Innovation in Next-Generation AI Memory Solutions
・あわせて読みたい:2025年Q4 NANDフラッシュの世界ランキング|首位のサムスン・急成長SK・Kioxia課題・YMTC台頭と2026年展望

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