Samsungが次世代DRAM「GDDR7」の量産を加速。NVIDIAの中国向けAIアクセラレータ「B40」に採用され、HBMとの違いやNPUとの関係が注目される。性能・コスト・移行性・運用安定性の4軸で導入メリットを評価。AI推論・ゲーム・GPU設計に革新をもたらす重要技術として、日本企業も戦略的対応が求められる。
GDDR7が切り拓くAIメモリの新潮流:Samsung × NVIDIAの戦略的連携
2025年、Samsung Electronicsは次世代グラフィックスDRAM「GDDR7」の量産体制を急拡大し、NVIDIAの要請に応じて供給能力を倍増させた。この動きは、AIアクセラレータ市場の急成長と、米中技術摩擦を背景とした製品戦略の転換を象徴している。
GDDR7の技術革新
SamsungのGDDR7は、従来のGDDR6と比較して大幅な性能向上を実現している。
- 転送速度:最大40Gbps(PAM3信号方式では最大42.5Gbps)
- 帯域幅:最大1.5TB/s(GPU搭載時)
- 製造プロセス:12nm級微細工程
- 電力効率:30%以上改善(パワーゲーティング技術など)
- 容量:24Gb(3GB)単位で提供、密度50%向上
PAM3方式により、1クロックで1.5bitの転送が可能となり、従来のNRZ方式よりも高速かつ省電力な設計が可能になった。
HBMとの比較:構造・性能・用途の違い
| 項目 | GDDR7 | HBM(HBM2/HBM3) |
|---|---|---|
| 構造 | 単層・外部実装 | 3D積層・GPUパッケージ内統合 |
| 帯域幅 | 最大1.5TB/s | 最大3TB/s以上(HBM3) |
| 消費電力 | 改善されつつあるが高め | 非常に低い(高効率) |
| コスト | 低コスト・量産向き | 高コスト・用途限定 |
| 用途 | ゲーム、一般GPU、AI推論 | AI学習、HPC、データセンター |
HBMはTSV(シリコン貫通ビア)による垂直積層構造を採用し、超高帯域・低レイテンシ・省電力を実現するが、製造難易度とコストが高く、用途は限定的。一方、GDDR7は量産性とコスト効率に優れ、AI推論やゲーム用途に最適。
NVIDIA B40との連携:中国市場向け戦略
NVIDIAの新型AIアクセラレータ「B40」は、米国の輸出規制に対応するため、A100やH100よりも性能を抑えた設計で、中国市場向けに最適化されている。
- HBMからGDDRへ:高性能HBMではなく、GDDR7を採用することでコストと供給安定性を確保
- 推論特化:学習よりも推論処理が中心であり、GDDR7の帯域で十分
- Samsungの対応:NVIDIAの要請により、GDDR7の生産ラインを拡張。2025年Q4から供給開始予定
この連携は、Samsungにとってメモリ事業の収益拡大だけでなく、AI市場でのプレゼンス強化にもつながる。
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GDDR7とNPUの関係:推論処理の最適化
NPU(Neural Processing Unit)は、AI推論に特化した専用プロセッサであり、低消費電力・高効率な行列演算を得意とする。従来はLPDDRやオンチップSRAMが主流だったが、モデルの巨大化により外部高速メモリとの接続が求められている。
✅ GDDR7の利点:
- 高帯域によりTransformer系モデルの高速推論が可能
- PAM3方式による低レイテンシ
- 電力効率の改善により、NPUとの相性が向上
⚠️ 課題:
- 外部実装型のため、モバイルNPUには不向き
- 高性能NPUではHBMの方が適している場合もある
NVIDIA B40は、GPUベースながらNPU的な推論処理に特化しており、GDDR7との組み合わせはその設計思想を反映している。
GDDR7導入評価の4軸分析
性能向上
GDDR7はPAM3信号方式と12nm級プロセスの組み合わせで、従来GDDR6X比20〜30%の帯域向上を実現。
- 帯域幅最大1.5TB/sで大規模モデル推論やリアルタイムレイトレーシングでスループットが向上
- 低レイテンシ特性によりレスポンスが改善し、対話型AIやゲーム操作の遅延を低減
- Transformer系や生成AIワークロードでモデルロード時間やバッチ処理時間を短縮
- NPU的な小規模推論アクセラレータの外部メモリとしても十分な性能を発揮
コスト削減
HBM搭載製品と比較し、GDDR7は初期導入・運用コスト両面で優位を持つ。
- 初期費用:HBM比30~50%低価格でPoCや検証環境への導入ハードルが低い
- 電力効率:消費電力30%削減によりデータセンター運用電気代を10~15%圧縮
- TCO改善:スケールアウト時の台数増でもランニングコストを抑え、ROIを短期間で回収可能
- 量産性:GDDR7は複数サプライヤーによる安定供給が進み、価格変動リスクを抑制
移行容易性
既存のGPU/アクセラレータ環境からスムーズに移行できる点が大きな強み。
- ハードウェア:標準PCIeカードへの差し替えで導入でき、基板設計の大幅変更は不要
- ソフトウェア:CUDA/TensorRTなど主要ライブラリはGDDR7対応済みで、最適化ガイドも整備中
- リファレンス設計:ボードメーカー提供のリファレンスを活用すれば、設計リードタイムを最小化
- クラウド対応:主要クラウド事業者でGDDR7搭載インスタンスが順次使えるようになる見込み
運用安定性
本番運用での信頼性確保には、供給・冷却・サポート面の検討が欠かせない。
- 供給体制:Samsungの量産拡大が進む一方、Micron/SK Hynix製品も併用しマルチソース調達を推奨
- 熱設計:高帯域メモリによる発熱増に対応するため、GPUボードの冷却性能見直しが必要
- ファームウェア・保証:エンタープライズ向けサポート期間やBIOS/ファーム更新ポリシーを確認
- 障害対策:エラー訂正機能(ECC)やモニタリングツールとの連携で、稼働率低下リスクを軽減
GDD7他社比較


導入:GDDR7とは何か?次世代DRAMの技術的特徴
GDDR7はPAM3信号方式を採用した高帯域・省電力型グラフィックスDRAM。
32Gbpsをベースに、各社がプロセス技術・容量・量産時期で差別化を進めている。
Samsung:40Gbps超えの技術先行と量産加速
Samsungは第5世代10nmプロセスで最大42.5Gbps対応のGDDR7を開発。
2024年末の量産開始を予定し、技術成熟度と速度性能で市場をリード。
Micron:グローバル供給体制とGPUベンダー連携
Micronは2024年内に量産体制を構築し、第一世代モジュールを市場投入。
複数GPUベンダーとの連携により、安定供給とサプライチェーン強化を図る。
SK hynix:大容量モジュールと安定供給で巻き返しへ
SK hynixは2025年Q1から量産開始予定。
32Gbps標準化と16〜24GBモジュール展開で、後発ながら安定性と容量面で差別化。
総括:GDDR7市場の競争構図と選定ポイント
SamsungとMicronが先行優位を築く中、SK hynixは容量と安定供給で対抗。
GPUベンダーやAI設計者は、速度・供給・容量のバランスでサプライヤー選定が重要。
GDDR7市場の競争構図まとめ
Samsungは技術力と速度で先行、Micronは供給網と顧客基盤で優位、SK hynixは大容量と安定性で巻き返しを狙う。各社の差別化戦略がGPU・AI推論市場に影響を与え、日本企業の選定眼が問われる局面に。


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