中国YMTC、武漢Fab3稼働で国産装置率80%超・232〜300層NAND量産加速|価格競争と自立戦略で半導体地図刷新

YMTC company logo and China flag 半導体情報

 中国YMTCが武漢Fab3で国産装置率80%超のNAND製造ラインを本格稼働。232層TLCから300層世代への量産を視野に、AMEC・Naura・SMEEなど国産装置を駆使し技術自立を加速。他社減産局面で増産を仕掛け価格競争を誘発し、SDVや車載市場進出にも布石。中国半導体戦略の転換点を現地視点で解説。

中国メモリ戦線に新旋風 ― YMTC武漢Fab 3が描くNAND覇権ロードマップ

 中国・長江存儲科技(YMTC)が、半導体業界の静寂を破る一手を打ちました。武漢にそびえる新拠点Fab 3は、米国制裁をくぐり抜ける“国産装置フル稼働”ライン。月産15万枚規模、国産比率80%超という数字は、ただの工場新設ではなく、中国半導体戦略の象徴そのものです。

国産装置で300層時代に突入

 AMECNauraの先端エッチャー、SMEEのKrF/ArF露光機、ACM Research Chinaの洗浄装置がずらりと並び、EUV不要の多重パターニングで232層〜300層対応を見据えています。これにより、従来の海外依存構造を打破し、国内完結のサプライチェーンを構築。

工程国産メーカー状況注目ポイント
成膜・エッチング中微半導体(AMEC)、
北方華創(Naura)
高い国産化率高アスペクト比エッチングでAMECの新型プラズマ装置を採用。300層対応を視野に入れた設計。
リソグラフィ上海微電子(SMEE)部分採用KrF/ArF浸漬露光機を使用。EUVは未導入、マルチパターニングで対応。
洗浄・CMP盛美半導体(ACM Research China)高い国産化率3D NAND特有の深孔洗浄に対応した装置を導入。
パッケージ・テスト長川科技(Changchuan Tech)ほぼ国産化SSD向けパッケージ工程も国内で完結可能

232層TLC(X4-9070)が抱える壁

 現行の232層TLCでは、ハイブリッドボンディング精度や15µm級深ビア加工の側壁ダメージが歩留まりの足かせに。国産装置は急成長中ですが、長期稼働での安定性データはまだ発展途上。それでもAI駆動のプロセス最適化や高純度材料の国産供給強化で、改善速度は加速しています。

歩留まり課題

 現地筋によれば、2デッキ構造のハイブリッドボンディング工程では界面欠陥が歩留まりを直撃するため、接合面のプラズマ活性化やCMP平坦化精度の改善が急務となっている。さらに、300層近いビア形成では高アスペクト比エッチングによる側壁ダメージや残渣が課題となり、AMEC製の新型エッチャーで条件最適化が進む。

 加えて、QLC(X4-6080)への移行段階ではセル信頼性の低下が避けられず、ECC強化やコントローラFW最適化でエラー率抑制を狙う。さらに、国産装置は海外製に比べ長期稼働データが不足しており、パイロットラインでの長期モニタリングと部材改良でプロセス安定性の裏付けを急いでいる
 こうした技術課題の一つひとつが、YMTCの歩留まり改善と中国半導体産業の自立加速に直結しており、300層世代での競争地図を塗り替える試金石となりそうだ。

価格競争の引き金に

 他社が減産モードの中、YMTCは増産アクセル全開。TLC/QLC両ラインを展開し、SSDからCXLストレージまで供給を広げ、価格下落圧力を市場全体に波及させています。SamsungやSK hynixなどの大手も、戦略修正を迫られる局面に。
 中国CXMTがDRAM DDR3、DDR4の低価格拡大により、DRAM価格市場が暴落した最近のことを思い出さざるを得ない。NANDも同じようなことが起きるのか?!

あわせて読みたい:【2025年DRAM価格高騰】DDR4がDDR5を逆転?LPDDR4Xも最大43%上昇!サーバー需要が引き起こす供給不足の実態

QLC 1Tb Price trend
NAND Flash Memory QLC 1TbのSpot価格:第2四半期からフラッシュメモリの価格が下げに転じた。

 AI需要の追い風を受け、eSSDを中心に価格は2025年第1四半期から上昇に転じたものの、第2四半期には上げ止まり、その後は緩やかな下降局面に入った。今後、YMTCの増産が価格をさらに下押しする可能性があり、市場動向の注視が求められる。こうした供給環境の変化は、NAND主要5社(Samsung、SK Hynix、Micron、Kioxia、SanDisk)の開発戦略にも影響を及ぼすことは避けられないだろう。

SDV&300層世代への布石

 2026年末には300層TLCを国産装置で量産、SDV(Software Defined Vehicle)向けに耐久性・低遅延化を施した車載モデルも視野に。-40℃〜125℃対応や長期供給保証といった車載要件に応えられれば、自動車ストレージ市場での存在感は一気に拡大するでしょう。

 中国YMTCが武漢Fab3は単なる新工場ではなく、“価格破壊”と“技術自立”という二枚刃を備えた、中国NAND戦略の最前線。232層から300層、そしてSDV時代へ――世界の半導体地図が塗り替わる瞬間は、もう目の前です。


【参考文献】
YMTC builds homegrown NAND production line to sidestep U.S. sanctions
中国のYMTCはいかにして米国の制裁に対抗し、チップのブレークスルーを成し遂げたか?

コメント

タイトルとURLをコピーしました