キオクシアが2D NANDとBiCS FLASH Gen3の生産を2028年で終了し、長年組込み市場を支えてきた24nm SLCも姿を消します。産業機器や車載ECUでは長期供給が前提のため影響は大きく、代替としては19nm世代SLCを提供するMacronix・SkyHigh・GigaDeviceの3社が注目されています。
キオクシア、2D NAND からの完全撤退へ ― 世界のメモリ産業が「歴史的な断絶点」を迎えた
2026年3月末、キオクシア中国が顧客向けに発行した通知は、メモリ産業にとって“ひとつの時代の終わり”を告げるものだった。
内容は、2D NAND(プレーナ NAND)と BiCS FLASH 第3世代の段階的な終了。
最終受注は 2026年9月30日、最終出荷は 2028年12月31日。
つまり 2029年、キオクシアは 2D NAND 市場から完全に撤退する。
しかも今回の終了は、単なる「SKU(※在庫管理のための製品識別コード)単位の整理」ではなく、技術プラットフォームそのものを丸ごと終わらせるという極めて大きな決断だ。
終了対象となる技術群 ― “東芝が築いた遺産”の幕引き
今回の通知で対象となるのは、キオクシアが長年提供してきたプレーナ NAND と初期 3D NAND の中核世代である。
- 32nm SLC(2009〜)
- 24nm MLC/SLC(2010〜)
- 15nm MLC/TLC(2014〜)
- 64層 BiCS3(2017〜)
これらは、産業機器・車載・ネットワーク機器など、“派手ではないが確実に世界を支えてきた技術”だ。
特に 24nm SLC/MLC は、長期供給を前提とする組み込み市場で絶大な信頼を得てきた。
その 24nm 世代を含むプラットフォーム全体が消えるという事実は、組み込み業界にとって設計思想の根本的な再構築を迫られるレベルの衝撃である。
2D NAND の終焉は必然だった
― ここ数年の流れが示していた“避けられない結末”
TSOP 終了(2026年3月19日)
低容量 MLC NAND の象徴だった TSOP パッケージは、基板材料のフェーズアウトと市場縮小で維持が困難になっていた。
Samsung も 2D NAND を終了
2026年2月、Samsung は華城 Line 12 の 2D NAND 生産を停止し、1C DRAM の後工程へ転換すると報じられた。
これで 大手 NAND メーカーで 2D NAND を維持する企業はゼロになった。
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なぜ今、2D NAND が消えるのか ― 理由は明確で、そして残酷
AI サーバー向け 3D NAND にリソースが集中
AI データセンター向け SSD の需要が爆発的に増加し、各社は 200層超の 3D NAND にクリーンルーム資源を集中させている。
MLC NAND の世界供給は 2026年に 41.7% 減少
TrendForce の予測では、2026年の MLC NAND 供給は前年比 -41.7%。
Samsung は 2025年に MLC の EOL を宣言し、2026年6月で出荷終了。
産業・車載市場の需要は残るが、量が小さすぎる
SLC/MLC は依然として重要だが、世界的なボリュームは 3D NAND の足元にも及ばない。
最も深刻な影響を受けるのは“組み込み市場”
― 車載 ECU(※Electronic Control Unit。車両の制御を担う電子制御ユニット)を含む長期供給前提の分野
2D NAND の終焉で最も困るのは、スマホでも PC でもなく、産業機器や車載 ECUだ。
- 10年以上の供給保証が前提
- 長期安定性を重視し、SLC/MLC を使い続けてきた
- 設計変更には認証や安全規格の再取得が必要
「2026年9月で最終受注」というスケジュールは、ほぼ“緊急事態”に近い。
では、2D NAND の代替はどこが担うのか
― 大手撤退後の市場を支える“現実的な3社”と、候補になり得ない1社
台湾:Macronix(マイクロニクス)
- 高信頼性 19nm MLC/SLC を保有
- 産業・車載向けの実績が豊富
- 長期供給性に強みがあり、世界的に信頼が厚い
韓国:SkyHigh Memory(SK グループ)
- 19nm MLC/SLC を保有
- 旧 Cypress / Spansion 系の技術を継承
- NOR・NAND の産業向け供給を継続
中国:GigaDevice(兆易创新)
- 信頼性とパフォーマンスに優れた 19nm SLC を保有
- NOR と併せて組み込み市場で急速にシェア拡大中
- 中国国内では“事実上の標準”に近い存在へ
台湾:Winbond(ウィンボンド) ― 代替候補にはなり得ない
- 主力は 43nm SLC と 32nm SLC
- 24nm SLC を 2025年に“7年かけて”リリース
- しかし GigaDevice・Macronix と比較してすべてにおいて劣る
そのため、本格的な代替候補にはならない。
プレーナ NAND の歴史に幕が下りる
― 1987年の誕生から40年、ひとつの技術が静かに退場する
1987年、東芝(現キオクシア)が NAND フラッシュを発明してから約40年。
その初代アーキテクチャである 2D NAND(プレーナ NAND) は、ついに大手メーカーのラインナップから姿を消す。
2029年、キオクシアの 2D NAND が完全に市場から消える頃、NAND フラッシュの世界は 500層を超える時代に突入しているだろう。その一方で、組み込み市場は新たな選択を迫られ、次の10年に向けた設計の再構築が本格化する。
参考記事
Kioxia Reportedly Exits 2D NAND Market, Phasing Out Floating Gate and BiCS FLASH Gen 3 in 2028
https://www.trendforce.com/news/2026/03/31/news-kioxia-reportedly-exits-2d-nand-market-phasing-out-floating-gate-and-bics-flash-gen-3-in-2028/


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