CXMTがNAND開発へ参入し、東京エレクトロンと2025年から既に装置協議を進めている事実は、中国メモリ戦略がHBF時代に向けて大きく転換していることを示す重要なシグナルです。HBMで培ったTSVやパッケージング技術をHBFへ展開しつつ、CXMTの動きがキオクシアを含む既存勢力への影響を詳しく解説します。
※画像の一部は、LinkedIn投稿画像を引用しております。
CXMTは本当にNANDを開発するのか?
中国メモリ産業の再編と、HBF時代に向けた戦略を読み解く
中国のDRAMメーカー CXMT(長鑫存儲)が
NANDフラッシュ開発に参入するという報道が増えている。
「DRAM専業のCXMTが、なぜNANDを?」
「本当に参入するのか、それとも噂なのか?」
「中国のメモリ戦略はどこへ向かうのか?」
この記事では、公開情報・装置動向・中国の政策を踏まえ、
CXMTのNAND参入が“既定路線”である理由を整理する。
CXMTはすでにNAND参入を決めている
複数の中国・台湾メディアによれば、
CXMTは2025年前後から装置メーカーと協議を開始し、
NAND参入を正式に決定したとされる。
これは単なる噂ではなく、
中国のメモリ産業全体の再編が背景にある必然的な動きだ。
DRAM=CXMT、NAND=YMTCの時代が変わりつつある
これまで中国のメモリ産業は、
- DRAM:CXMT(長鑫存儲)
- NAND:YMTC (長江存儲)
という縦割り構造だった。
しかし米国の制裁により、
特にNANDを担うYMTCは装置調達・技術開発で大きな制約を受けている。
そのため中国政府は、
DRAMとNANDを分けず、両社が両方を扱う体制へ移行しつつある。
CXMTのNAND参入は、この再編の一環だ。
CXMTがNANDをやる理由
産業リスクの分散
YMTCが制裁で苦戦する中、
NAND技術を一社に依存するのはリスクが大きい。
CXMTがNANDを持つことで、
サプライチェーンの冗長性が確保される。
中国国内のNAND需要の急増
AIサーバー、スマートフォン、PC、車載など、
中国国内のNAND需要は急拡大している。
しかし供給はYMTCに偏っており、
国内需要を満たすには新たな供給源が必要だ。
HBF(High Bandwidth Flash)時代に向けた技術基盤の確保
HBFは NANDフラッシュを高速化した次世代メモリであり、
HBMの「フラッシュ版」とも言える存在だ。
HBFには次のような技術が必要になる。
- 3D NANDの積層技術
- 深孔エッチング
- 階段形成
- 高速I/Oアーキテクチャ
- パッケージング(HBM類似のスタック構造もあり得る)
HBFはNAND技術の延長線上にあり、
NANDをやらない企業はHBFを作れない。
一方でCXMTはHBM向けに、すでに以下のノウハウを持っている。
- TSV形成
- ウェハ薄化
- 積層
- マイクロバンプ接続
- パッケージング歩留まり改善
これらはHBFのパッケージング構造に展開可能であり、
中国としては HBMとHBFの両方を国内で量産できる体制 を作りたい。
そのために、CXMTにNAND技術を持たせる必要がある。
TEL(東京エレクトロン)との装置協議がすでに進んでいる
業界関係者によれば、
CXMTは2025年時点で東京エレクトロン(TEL)と装置選定の協議を開始している。
TELにとって中国市場は最大級の収益源であり、
制裁環境下でも中国向け装置ビジネスは極めて重要だ。
装置メーカー側がすでに
「CXMTがNANDからHBFへ進む」前提でロードマップを組んでいることは、
CXMTのNAND参入が既定路線である強いシグナルと言える。
CXMTはどのNAND方式から入るのか?
最も現実的なのは、
BiCS型(TCAT系)に近いシンプルな3D NAND だ。
装置調達が比較的容易で、
中国国内メーカー(NAURA、AMEC)でも対応可能だからだ。
ここにHBFを見据えた戦略が重なる。
HBFを念頭に置くなら「128層で十分」
HBFは NANDを高速I/O化し、積層して帯域を稼ぐ という思想であり、
必ずしも300層級の最先端NANDを必要としない。
むしろ、
- 安価に作れる128層クラスのNANDを大量に積層する
- HBM類似のパッケージングで帯域を稼ぐ
というアプローチが合理的だ。
CXMTが最初に狙うのは、この領域だと考えられる。
課題:周辺トランジスタ(CMOS)の高速化
HBFでは高速I/Oがボトルネックになるため、次のような課題が出てくる。
- 周辺CMOSの高速化
- 読み出しレイテンシの短縮
- 高速インターフェース設計
- ECC処理の高速化
CXMTはDRAMで高速I/Oの経験を持つため、
この部分はDRAM技術の知見を流用できる可能性が高い。
最大の課題:NAND人材が社内にいない
CXMTはDRAM専業であり、
NAND経験者はほぼゼロだ。
そのため、次のような人材戦略が不可避になる。
- YMTCからの引き抜き
- 台湾・日本・韓国からの採用
- 海外経験者の招聘
特に日本オフィス(横浜・福岡)は、
採用拠点としての役割が大きいと見られる。
NAND工場はどこに建設されるのか?
現時点で公式発表はないが、
最有力は上海新Fabだと考えられる。
合肥はDRAM専用ラインとして完成しており、
NANDは装置構成が大きく異なるため、
新工場の方がレイアウト設計がしやすい。
上海の中では、
浦東新区(張江または臨港)が候補と見られる。
まとめ:CXMTのNAND参入は“既定路線”
- CXMTはNAND参入を正式に決定している
- 背景には中国メモリ産業の再編がある
- HBF時代に向けてNAND技術が必須
- HBMのTSV・パッケージング技術をHBFに展開可能
- TELとの装置協議がすでに進行している
- 最初はBiCS型の中層3D NAND(128層クラス)から入る可能性が高い
- 人材は外部採用が中心
- 工場は上海新Fabが最有力
CXMTのNAND参入は噂ではなく、
HBF時代に向けた戦略的必然と言える。
参考記事
・中国CXMTが半導体「NAND」市場に殴り込み/キオクシアを襲う価格暴落の懸念
・CXMTのDRAM増強停滞 米規制と低歩留まりが制約
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