2025年の中国経済は表面的な成長率とは裏腹に、政府主導の買い替え促進政策「両新政策」によって演出された一時的な消費がGDPを押し上げています。住宅ローン金利の低下、オフィス空室率の上昇、交通インフラの赤字など、構造的な課題が浮き彫りに。数字の裏にある政策依存型の成長モデルと、その持続性への深刻な疑問を掘り下げます。
中国経済2025:買い替え政策で“演出された成長”の限界
2025年、中国のGDP成長率は5.3%。一見すると順調な数字です。しかしその実態は、政府主導の買い替え促進政策「両新政策」によって“演出された消費”が牽引したものであり、民間購買力による自立的な内需成長とは程遠い構造が浮かび上がります。
中国経済は今、政策で数字を作るフェーズに突入しています。
両新政策とは?:消費を“作る”国家プロジェクト
- 正式名称:「大規模設備更新および消費財買い替え促進行動計画」
- 開始:2024年3月、国務院発表
- 対象:自動車、家電、デジタル機器、インテリア、産業設備など
- 財政支援:国家発展改革委員会が3000億元の特別国債を投入
- 成果(2024年末まで):
- 家電:4900万台以上
- 自動車:520万台以上
- インテリア:5100万点以上
👉 これらは“自然な消費”ではなく、“政策で作られた消費”です。
GDPとの関係:数字は伸びるが、実態は薄い
- 2025年上半期のGDP成長率:5.3%
- 消費の寄与率:52%
- 両新政策が牽引した品目(前年比):
- 家電:+38.8%
- 家具:+26.9%
- 通信機器:+19.9%
- 建材・内装材:+9.7%
- これら5品目だけで社会消費財小売総額の伸びを1.4ポイント押し上げた
- 設備投資も政策主導で増加:設備・工具・器具購入投資額は前年同期比+18.2%
👉 GDPは伸びた。だがその中身は、補助金で膨らませた“演出型成長”に過ぎない。
なぜ“自立的内需”とは言えないのか?
- 補助金依存型の消費
補助金がなければ買い替えは進まない。政策終了後の反動減は避けられない。 - 将来不安による消費抑制
雇用不安、住宅価格下落、教育・医療費の上昇が消費マインドを冷却。 - 外需不振の代替策
米中摩擦や輸出減速により、内需強化が“苦肉の策”として選ばれている。 - 地域格差と購買力の偏在
都市部では政策効果が出るが、地方では購買力不足で恩恵が限定的。
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住宅ローン金利:過去最低でも買い手は動かず
- 金利は約4%前後、一部都市では3.5%以下の優遇も。
- しかし、若年層の購買力不足と将来不安により、住宅需要は鈍化。
- 不動産価格は下落傾向、投資対象としての魅力も低下。
👉 金利を下げても動かない市場。それは構造的な信用収縮と需要不足の証。
👉 2025年10月現在、筆者が滞在する都市では金利3.0%が出始めました。
オフィス空室率:外国資本が撤退、都市が空洞化
- 北京・上海の空室率は20%超、全国平均も危険水準。
- Bloomberg報道(2025年10月)によると、外国人投資家の損失が拡大し、ディストレスト売却が急増。
- 賃料はパンデミック前比で最大30%下落。
- 外資系企業の撤退・縮小、新規供給過剰が主因。
👉 都市の中心部が空洞化する現象は、中国経済の構造転換と外資離脱の象徴。

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外資撤退とオフィス価値の崩壊:構造的調整が鮮明に
Bloomberg報道(2025年10月)によれば、外国資本による中国不動産からの撤退が加速。特に北京・上海のオフィスビルは、2019年比で最大40%の価値下落が確認され、空室率も20%超に達しています。
- 米系ファンドやシンガポール系投資家は損失を抱え、ディストレスト資産として売却を進行中
- 賃料はパンデミック前比で最大30%下落
- 外資系企業の撤退、テナント需要の低迷、都市部の商業不動産は構造的な調整局面へ
👉 外資の信頼は回復せず、売却圧力は今後も継続。これは政策主導型成長の限界を象徴する現象です。
地下鉄・鉄道:巨額赤字と“使われないインフラ”
地下鉄
- 29都市中26都市が赤字、累積負債は約4.3兆元(約90兆円)。
- 重慶市では収入30億元に対し運営コスト111億元。
- 深圳では330億元超の赤字、照明・冷房の停止など経費削減策も。
高速鉄道
- 国家鉄路集団の累積債務は6.2兆元(約130兆円)。
- 毎年約1000億元(約2兆1000億円)の赤字。
- 黒字路線は北京〜上海など6路線のみで、全体の6%に過ぎない。
- 地方路線では「ゴースト駅」が多数存在。
👉 「建設ありき」のインフラ政策は、持続可能性を欠いた“負の遺産”になりつつある。
総括:中国経済は“数字を作る”フェーズに突入している
中国経済は今、以下のような構造的課題に直面しています:
- 過剰投資 vs 実需不足
- 信用収縮と消費不振
- 都市機能の再定義と外資撤退
- 財政圧迫と補助金依存
- GDP成長の質的課題
数字は出ている。だがその中身は、補助金と建設で膨らませた“演出型成長”。持続性は乏しく、構造改革なしには限界が見えている。


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