今週、台湾の半導体業界で最もホットな話題はシリコンフォトニクスとCPO(共同封装光学)だ。TSMCは5月14日の技術フォーラムで最新の光伝送技術TSMC-COUPEの量産計画を発表予定。傘下の精材と采鈺が「双頭の矢」として動き出し、台湾が次世代AI半導体の「光の革命」をリードできるか、世界の業界関係者が注目している。そして、Rapidusはどうするのか?
今週の台湾テック界、最大のホットトピックはこれだ。
「銅線の時代は終わる。チップの中を走るのは、これからは光だ」——そんな声が、台湾の半導体業界でにわかに熱を帯びている。AIブームが爆発的に加速するなか、データセンターの”血管”とも言える伝送技術が根本から刷新されようとしている。キーワードはシリコンフォトニクスとCPO(Co-Packaged Optics:共同封装光学)。そして、その最前線に立つのが台湾、なかでもTSMCを中心とした強固なサプライチェーンだ。
果たして台湾は、この「光の革命」をリードできるのか? 今週の動きがその答えに大きく近づく。
今週木曜日、台北が世界の視線を集める
5月14日(木)、TSMCは台湾で2026年技術フォーラムを開催する。4月下旬に米国で行われた第一回に続く今回の台湾場次は、業界関係者が固唾をのんで待ち構えるビッグイベントだ。
次世代先進プロセスのロードマップはもちろん、今回特に熱いのがシリコンフォトニクスとCPO関連の発表。米国フォーラムでは、TSMCが独自開発したTSMC-COUPE(コンパクト汎用フォトニックエンジン)が重要マイルストーンに到達予定であることが明かされ、基板上に実装する真のCPOソリューション「COUPE on substrate」の量産が2026年中に始まると発表された。
台湾フォーラムで何が語られるか——それは単なる技術発表ではなく、「台湾が光の時代をどこまで本気で主導する気があるか」の宣言になるかもしれない。
そもそも「光進銅退」って何? なぜ今なのか
少し立ち止まって整理しよう。「光進銅退(光が進み、銅が退く)」とは、半導体・データ通信の世界で起きているパラダイムシフトを指す言葉だ。
これまでチップ間・サーバー間をつないできたのは銅配線。しかし、AIの処理に必要なデータ量が天文学的に膨れ上がるにつれ、銅線は限界を露呈し始めた。
——速度の頭打ち、熱の問題、膨大な電力消費。一方、光(フォトニクス)を使えば、より速く、より涼しく、より省エネで情報を届けられる。シリコンフォトニクスは、その「光伝送」をシリコン半導体の製造プロセスで実現する技術だ。
AIデータセンターが世界中で建設ラッシュを迎えているいま、この技術の重要性はかつてないほど高まっている。シリコンフォトニクスは、次のAI時代を支えるインフラの「心臓部」になりうる——だからこそ、業界全体が血眼になってポジションを取りに来ているのだ。
【最新情報】台積電(TSMC)、CPOへ全力攻勢——「双頭の矢」が同時始動
封装・テスト・光学部品のパートナーを積極的に連携させ、傘下の精材と采鈺が「双頭の矢」として同時に動き出した。
■ 精材(Xintec)の最新動向
- 取締役会が資本予算案を承認。約2,221万ドル(約新台幣7億元)を投じ、12インチ・裏面銅プロセス加工サービス関連設備を購入。
- 業界の見立てでは、この技術はTSMCのA16世代プロセスが主軸に据える「Super Power Rail(SPR)」裏面給電アーキテクチャに高度に対応
- さらに将来のシリコンフォトニクスにおける EIC(電子集積回路)とPIC(光子集積回路)の積層需要とも密接に連動
■ 采鈺(Visera Technologies)の強み
- 光学センシングと特殊用途ICを長年深耕
- 光学部品の統合・センシング技術において確固たる優位性を保有
- 今後、シリコンフォトニクスの光センシング・光学モジュール・高速伝送アプリケーションで重要な役割を担うと期待
TSMCの「双頭の矢」——精材と采鈺が動き出した
TSMCはただ技術を開発するだけではない。封装・テスト・光学部品のパートナーを積極的に束ね、シリコンフォトニクスのエコシステムを台湾に丸ごと構築しようとしている。その先鋒として浮上しているのが、TSMCグループ傘下の2社だ。
精材(Xintec)——70億円を投じて「光の時代」へ跳躍
精材の動きは鮮烈だ。取締役会は約2,221万ドル(約70億円相当)の設備投資を承認。12インチウェーハの裏面銅配線(晶背銅)プロセス関連設備を一気に導入する。
この技術、TSMCのA16世代プロセスが掲げる「Super Power Rail(SPR)」——ウェーハ裏面から電力を供給する革新的アーキテクチャと直結する。さらに将来のシリコンフォトニクスにおけるEIC(電子IC)とPIC(フォトニクスIC)の積層実装にも不可欠な基盤技術だ。
精材はかつてCISイメージセンサー向けパッケージの専業メーカーとして知られていた。それが今や、TSMCの最先端プロセス進化を最前線で支えるパートナーへと完全変身しつつある。業界は今回の投資を「光の時代への入場宣言」と受け止めている。
采鈺(Visera Technologies)——光学技術の蓄積が、いま花開く
もう一本の矢・采鈺は、長年にわたって光学センシングと特殊用途ICの深化に専念してきた「光のスペシャリスト」だ。その技術的蓄積が、シリコンフォトニクスという新しい戦場でいよいよ本領を発揮する。
光センシング・光学モジュール・高速伝送アプリケーション——采鈺が担いうる役割は広く、かつ代替が難しい。地味に見えた技術の積み上げが、AI時代の爆発的な需要と交差する瞬間が、今まさに訪れようとしている。
台湾はシリコンフォトニクスをリードできるのか!?
率直に問おう——台湾はこの「光の革命」を世界に先駆けて主導できるのか?
強みは明白だ。TSMCという世界最強の製造基盤に加え、精材・采鈺のような専門性の高いグループ企業、さらに高密度に集積した封装・テスト・材料のサプライチェーン。シリコンフォトニクスに必要な「総合力」を、台湾はすでに相当程度揃えている。
一方、競合も虎視眈々だ。Intel、Samsung、そして欧米のスタートアップ群もシリコンフォトニクスに多大なリソースを注いでいる。覇権は約束されていない。
だからこそ、今週木曜日のTSMC技術フォーラムが重要になる。台湾がどこまでの青写真を持ち、どこまでの実行力を見せるか。業界関係者の目が、台北に注がれている。
まとめ——「光」を制する者が、AI半導体の未来を制す
半導体の歴史は、常に「限界突破」の連続だった。微細化の限界に直面するたびに、人類は新しい技術で壁を打ち破ってきた。そして今、「光」こそが次の壁を破るカギとして浮上している。
精材の70億円投資、采鈺の光学技術、TSMCのCOUPE
——これらのピースが今週、台北でどんな全体像を描き出すのか。それは台湾の次の10年を占う、まさに歴史的な一週間になるかもしれない。
チップはいよいよ「光」で動く。台湾がその舞台の主役になる日は、思ったより近い。
Rapidusはどうするのか?
一方、日本が国家の威信をかけて推進するRapidusはどうなのか。2nmプロセスの量産立ち上げに全力を注ぐいま、シリコンフォトニクスやCPOへの本格的な布陣はまだ見えていない。TSMCはすでにCOUPEの量産を今年中に開始し、IntelはフォトニクスICの研究開発で長年の蓄積を持ち、Samsungも独自の光伝送技術への投資を加速させている。
「光の革命」においても、Rapidusは一歩どころか二歩、三歩の遅れを取っているのが現実だ。半導体の製造プロセスを追いかけながら、同時に次世代伝送技術でもキャッチアップを迫られる——Rapidusに課せられたハードルは、想像以上に高い。
※本記事は2026年5月11日付・経済日報の報道をもとに構成しました。



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