次世代EUV(High-NA)が量産段階へ|ASML稼働率80%超、Intel・TSMC・Samsung・Rapidusの最新戦略

次世代EUV(High-NA)が量産段階へ|ASML稼働率80%超、Intel・TSMC・Samsung最新動向 半導体関連記事

2027~2028年に始まる2nm・1.4nm世代の量産を左右する「次世代EUV(High-NA EUV)」が、いよいよ実用段階へ近づいている。オランダASMLは、最新露光装置「TWINSCAN EXE:5200B」の顧客工場で稼働率80%超を達成したことを明らかにし、Intel(インテル)やSamsung Electronics(サムスン電子)は2027~2028年の量産導入を計画。一方、TSMC(台積電)はコストや生産性を見極めながら慎重姿勢を維持しており、各社の戦略には大きな違いが表れている。

日本でもRapidus(ラピダス)の研究開発を支える北海道千歳市へのHigh-NA EUV導入計画が進んでおり、先端半導体の研究・量産基盤は新たな段階へ入りつつある。

本記事では、次世代EUV(High-NA)の仕組みや従来EUVとの違い、Intel・Samsung・TSMC・SK hynix・Rapidusの導入ロードマップ、フォトマスクやフォトレジストなど周辺材料の最新動向、日本への導入計画まで、最新情報を基に分かりやすく整理する。

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次世代EUV(High-NA)とは何か 解像能力はNA0.33から0.55へ

次世代EUV露光装置は、解像能力の指標となるNA(開口数)を従来の0.33から0.55へ高めた技術で、業界では「High-NA」とも呼ばれる。1回の露光で線幅8nm(ナノメートル)を解像でき、最先端のロジック半導体やDRAMの量産に使える水準に達している。

現行のEUVよりも微細な回路を形成できるため、Samsung Electronics(サムスン電子)やIntel(インテル)が2027〜28年に量産へ導入する公算が大きくなっている。ASML製の次世代EUV露光装置「TWINSCAN EXE:5200B」は、NXEシリーズと比べて約40%高い結像コントラストと8nmの解像力を持ち、1回の露光でより微細なパターンを形成できることから、従来のNXEシステムに比べてトランジスタ密度を大幅に高められるとされる。

ASML「TWINSCAN EXE:5200B」、稼働率8割超えの意味

ASMLは2026年2月下旬、量産対応の次世代EUV露光装置「TWINSCAN EXE:5200B」で設計通りの性能が得られたと米国での国際学会で発表した。2023年に製品化したプロセス開発向けの次世代EUV露光装置「TWINSCAN EXE:5000」と比べ、1時間当たりのウエハー処理枚数を175枚と6割高めた。メンテナンスや故障によるダウンタイムが大きく減り、納入した顧客拠点での稼働率は8割を超えた。

ASML最高経営責任者(CEO)のChristophe Fouquet(クリストフ・フーケ)氏は2026年1月の記者会見で、次世代EUVによる半導体の量産が2027〜28年に始まるとの見通しを示した。同社日本法人、エーエスエムエル・ジャパンの永原誠司氏(テクニカルマーケティングディレクター)は「まずはロジック半導体で使われる可能性が高い」と見る。メモリーよりも回路が複雑で、解像能力の高さを生かせるためだ。

主要各社の導入動向 最速はIntel、慎重派はTSMC

各社の対象世代や量産開始時期には温度差がある。現時点の導入動向を整理すると、以下の通りだ。

企業プロセス世代導入状況量産開始時期特記事項
Intel(インテル)1.4nm世代(14A)TWINSCAN EXE:5200Bの受け入れ試験を完了少量生産2027年後半、量産2028年次世代EUV採用に最も積極的。経営不振で開発体制に懸念の声も
Samsung Electronics(サムスン電子)2nm世代(前倒し導入も検討)/1.4nm世代TWINSCAN EXE:5200Bを初導入、2台目を2026年上半期に予定2027年ごろ1.4nm世代を待たず2nm世代への前倒し導入も視野
TSMC(台積電)1.4nm世代は見送り方向、1nm世代(A10)で本格採用の見方現行世代EUVを継続活用中2029〜30年ごろ(本格採用の場合)コスト・生産性を見極め中。熊本第2工場は現行世代EUVで2028年量産
SK hynix(SKハイニックス)DRAM韓国・利川のDRAM工場に導入済み(2025年9月)導入済みロジックだけでなくDRAMにも次世代EUV活用が広がる事例
Rapidus(ラピダス)2nm世代産総研北海道千歳拠点に次世代EUV導入予定2030年3月期に稼働国内企業向けに先端半導体材料・プロセス開発の場を提供

Intel(インテル):14A世代で最速導入も、開発体制に懸念

Intel(インテル)のCEOであるLip-Bu Tan(リップブー・タン)氏は2026年1月の決算説明会で、次世代EUVを1.4nm世代(Intel 14A)で導入する考えを示した。同社は1.4nm世代のロジック半導体の少量生産を2027年後半に、量産を2028年に始める計画で、2025年12月にはTWINSCAN EXE:5200Bの受け入れ試験を終えたと明らかにした。Intelは業界で初めてHigh-NA EUVを用いた商用生産設備の導入を完了しており、次世代EUVの採用に最も積極的な立場を取ってきた。

同社はTWINSCAN EXE:5000の導入で先陣を切るなど微細化競争で巻き返そうとしているが、経営不振により「けん引役の技術者が退社するなど開発は順調ではないようだ」(業界関係者)との指摘もある。

Samsung Electronics(サムスン電子):2nm世代での前倒し導入も視野に

Samsung Electronics(サムスン電子)はここにきて次世代EUVの開発を加速しており、1.4nm世代を待たず2nm世代のロジック半導体の量産に導入するとの見方も出てきた。2025年後半に2nm世代の量産を始めており、2027年にも次世代EUVを導入する可能性がある。Samsung Electronics(サムスン電子)は2025年10月にTWINSCAN EXE:5200Bを初納入され、2026年上半期には1.4nm世代の量産に向けて2台目の導入も予定されている。

TSMC(台積電):1.4nm世代での導入は見送り方向

ファウンドリー(半導体受託生産会社)最大手のTSMC(台積電)は、1.4nm世代での次世代EUV導入を見送る方向にある。生産性やコストで既存の低NA EUVを上回れるかを見極めている段階だ。業界アナリストの間では、既存の低NA EUV装置でも二重露光(ダブルパターニング)によって8nmの解像力に対応できるため、TSMC(台積電)が次世代EUVを本格採用するのは1nm級のA10世代からで、量産投入は2029〜30年ごろになるとの見方も出ている。

一方、TSMC(台積電)が日本国内で建設を進める熊本第2工場については、当初計画していた成熟プロセス(6〜7nm)から3nmプロセスへと計画が引き上げられ、2028年からの量産開始が見込まれている。AI・HPC向け半導体の需要急増が背景にあるとみられ、日本国内で3nmチップが量産されるのは初めてとなる。

SK hynix(SKハイニックス):DRAM工場への導入が先行

韓国SK hynix(SKハイニックス)は2025年9月、韓国・利川(イチョン)市のDRAM工場にTWINSCAN EXE:5200Bを導入した。ロジック半導体だけでなく、DRAMの量産にも次世代EUVの活用が広がりつつあることを示す事例といえる。

周辺部材の開発状況 フォトマスクとフォトレジストにも課題

フォトマスク(回路原版)やフォトレジスト(感光材)など、次世代EUVの量産導入に欠かせない周辺部材の開発もおおむね順調に進んでいる。

フォトマスク:「スティッチング」方式に収束

フォトマスクについては、マスク上のパターンを半導体ウエハーへ転写する際の縮小率がNAの向上により従来とは変わる。これに伴い、1回で露光できる面積(フィールドサイズ)が半分になる。これに対処するためマスクの寸法や縦横比を変えることが検討された時期もあったが、露光パターン同士をうまくつなぎ合わせる「スティッチング」を使う方向に収束しつつあるという(エーエスエムエル・ジャパン永原氏)。

フォトレジスト:新型「MOR」への移行は課題残す

フォトレジストについては、少なくとも量産開始当初は現行の化学増幅型レジスト(CAR)が主流となる可能性が高まった。次世代EUVの導入に合わせて金属酸化物レジスト(MOR)へ移行すると見られてきたが、露光から現像までの待機時間にレジストの特性が変わる「引き置き」への対応に課題が残る。露光装置や塗布現像装置の仕様の一部変更が必要となる可能性もある。

ASMLはNA0.33と0.55のEUV露光装置双方の生産性改善に向け、光源の高出力化にも継続的に取り組んでいる。製品レベルの光源出力は現時点で600W前後だが、2026年2月の国際学会では出力を1000Wに高める手法を実証したと発表した。

日本への次世代EUV上陸 2030年をめどにラピダスも視野

産総研が北海道千歳市に研究開発拠点、2030年3月期に稼働

Rapidus(ラピダス、東京・千代田)も将来的に次世代EUVを導入する可能性が高い。これを見越し、産業技術総合研究所(産総研)はラピダスの工場がある北海道千歳市に先端半導体の研究開発拠点を設け、次世代EUV露光装置を導入する計画を進めている。2030年3月期に稼働させ、国内企業が先端半導体材料やプロセスの開発に使えるようにする方針だ。

なお、日本国内ではすでにラピダスの千歳工場や米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)の広島工場が、現行世代のNA0.33のEUV露光装置を導入済みである。TSMC(台積電)も2028年から3nm世代のロジック半導体を量産する熊本第2工場に、現行世代のEUV露光装置を導入するとみられる。

ASMLジャパン、2027年までに従業員数を2割増員へ

EUV露光装置のユーザーが日本国内で増えていることに対応し、エーエスエムエル・ジャパンは2027年までに従業員数を従来比2割増の約600人に増やす計画だ。ASMLの日本法人は、キオクシアやソニーグループ、TSMC(台積電)子会社のJASM(熊本県菊陽町)など半導体工場のある地域に拠点を構えており、ラピダスが工場を建設する北海道千歳市にも進出を予定している。EUV露光装置は導入後の保守・メンテナンス体制が重要であり、装置メーカー側の人員拡充は日本における先端半導体の安定供給を支える基盤となる。

まとめ:次世代EUVの実用化はロジック半導体から本格化へ

次世代EUV(High-NA)露光装置は、ASMLの顧客拠点における稼働率が8割を超え、量産対応の水準に近づいた。Intel(インテル)が1.4nm世代での最速導入を目指す一方、Samsung Electronics(サムスン電子)は2nm世代での前倒し導入を検討し、TSMC(台積電)は1.4nm世代での導入を見送るなど、各社の戦略には温度差がある。ASML日本法人の見立て通り、まずはメモリーよりも回路が複雑なロジック半導体から次世代EUVの活用が広がっていく可能性が高い。

日本では、ラピダスの北海道千歳拠点を中心に2030年をめどに次世代EUV露光装置が導入される見通しであり、産総研の研究開発拠点整備やASMLジャパンの増員計画など、次世代EUVを支えるエコシステムの整備が着実に進んでいる。フォトマスクのスティッチング技術やフォトレジストのMOR移行など周辺技術の課題も残るが、2027〜28年からのロジック半導体量産開始に向けて、業界全体の取り組みは着実に前進していると言えるだろう。

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