中国YMTCが韓国SSD市場に本格参入|NAND世界シェア3位を狙う中国メモリ大手の攻勢

中国YMTCが韓国市場に本格参入 半導体メモリ

中国NANDフラッシュ大手の長江存儲科技(YMTC)が、Samsung ElectronicsとSK hynixが支配する韓国市場へ本格参入した。コンシューマー向けSSDブランド「ZHITAI(智泰)」を投入し、AI向け製品へ注力する大手メモリメーカーの隙を突いてシェア拡大を狙う。第15次5カ年計画による国家支援や武漢FAB3の稼働を追い風に、YMTCはNANDフラッシュ市場で世界シェア3位浮上を視野に入れている。

韓国市場への直接攻勢と、隙を突いた戦略

YMTCは、韓国のITディストリビューター「Dowoo Information」と公式販売代理店契約を締結し、コンシューマー向けストレージブランド「智泰(ZHITAI)」を韓国市場で正式に発売しました。

この背景には、メモリ市場の構造変化があります。サムスンやSKハイニックス、マイクロンなどの大手サプライヤーは現在、空前のAI特需に対応するため、高帯域幅メモリ(HBM)やエンタープライズ(企業)向け高容量SSDへと生産リソースを全面的にシフトしています。

この結果生じた、一般コンシューマー向けSSDの供給不足と価格高騰という市場の「空白」を狙い、YMTCは価格優位性を武器に急速にシェアを拡大しています。業界では、YMTCが市場平均よりも大幅に安い「攻撃的な低価格戦略(アグレッシブ・プライシング)」を展開しており、既存の価格体系を破壊するほどの脅威になっていると報じられています。

Computex 2026で披露された最新ラインナップ

技術力の誇示と市場浸透の足がかりとして、YMTCは「Computex 2026」にて「智泰(ZHITAI)」ブランドから最新のSSD製品3機種を世界に向けて初公開しました。

投入されたのは、独自開発の「Xtacking」アーキテクチャに基づく高密度3D NANDフラッシュを搭載したモデルです。フラッグシップとなるPCIe 5.0対応の「TiPro9000」(着脱式ヒートシンク搭載)をはじめ、メインストリーム向けの「TiPlus9100」、メインボード直付けやノートPCの換装に最適な「TiPlus7100s」など、コンシューマー市場のあらゆる需要を網羅する強力なラインナップを揃えています。最新世代の製品は294層に達しており、サムスン(286層)やSKハイニックス(321層)といった韓国勢に完全に肉薄しています。

Computex 2026で初公開された「智泰(ZHITAI)」SSDシリーズ
Computex 2026で初公開された「智泰(ZHITAI)」SSDシリーズ.。出典画像: Hardware & Co

第15次5カ年計画と武漢FAB3の始動

こうしたYMTC攻勢の陰の立役者は、もちろん中国政府による第15次5カ年計画(2026〜2030年)の始動にあります。国家を挙げた強力なバックアップのもと、半導体製造の自給率向上と技術覇権への投資がさらに加速しています。

生産能力の面では、中国湖北省武漢市で建設中の第3工場(武漢FAB3)が今年末に稼働を開始し、来年から全面量産に入る計画です。この工場では製造装置の国産化率が50%を突破しており、米国の制裁下でも安定したサプライチェーンを構築しつつあります。この武漢FAB3の量産が開始したら、世界シェア3位は時間の問題だというのが、現在の市場における共通の見方です。

世界シェア3位の座を窺うYMTC

TrendForceの2026年第1四半期データによると、世界のNANDフラッシュ市場はサムスン電子が31.6%で独走し、2位のSKハイニックスグループが17.6%で追う展開となっています。

3位以降はキオクシア(13.9%)、マイクロン(13.9%)、サンディスク(13.9%)の3社が同率で並び、激しい混戦状態にあります。YMTCのシェアは現在10%台を維持しており、下位層から上位への浮上を確実なものにしています。キオクシアをはじめとする3位グループがコンシューマー向け製品の比率やAI特需への対応で苦戦するなか、アグレッシブな価格戦略を展開するYMTCがこのままシェアを伸ばせば、混戦する「世界3位」の座を奪う可能性が現実味を帯びています。

YMTCは2026年から2027年にかけて新規株式公開(IPO)も計画しており、資金調達によるさらなる大攻勢が予想されます。韓国勢がAI需要で巨額の利益を上げる一方、足元のコンシューマー市場から始まった中国勢の猛追は、今後の世界のメモリ市場の勢力図を大きく塗り替える変数となりそうです。

参考記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました