AI半導体ブームの主役といえば、HBMを手掛けるSamsung、SK hynix、Micronだろう。一方、台湾のWinbond(華邦電子)はHBMも最先端3D NANDも手掛けておらず、本来ならAIブームとは無縁の存在だった。しかし、大手メーカーがHBMへ経営資源を集中したことで、NOR FlashやDDR4など成熟メモリの価値が思わぬ形で高まり、Winbondにも追い風が吹き始めた。その背景には、AIブームが生んだ成熟メモリ市場の供給不足という、まさに「棚から牡丹餅」とも言える意外な構図があった。
AIブームが成熟メモリを不足させた
AIサーバー需要の急拡大を受け、世界の大手メモリメーカーはHBMやDDR5へ生産能力を集中させている。その結果、成熟世代のメモリが相次いで縮小された。
代表的なのが、
- DDR4
- LPDDR4
- NOR Flash
- SLC NAND
である。
利益率の高いHBMへ経営資源を振り向けることは合理的な経営判断だ。しかし、その裏で成熟メモリの供給能力が急速に減少し、市場では供給不足が目立ち始めた。
そこで脚光を浴びたのが、これらを主力としてきたWinbondだった。
WinbondがAI向け製品へ転換したわけではない。市場のほうがWinbondを必要とせざるを得なくなったのである。
HBMだけではAIサーバーは完成しない
AIサーバーの主役はGPUとHBMだ。しかし、それだけではサーバーは動かない。
起動用Boot ROM、BMC(Baseboard Management Controller)、NIC、各種コントローラーなど、多数の制御ICにはNOR Flashが必要となる。
GPUが最先端でも、これらの制御用メモリが不足すればサーバーそのものを出荷できない。
AIサーバーの普及は、結果としてNOR Flash市場まで押し上げることになった。
これもWinbondにとっては予想外の追い風だったと言える。
DDR4で存在感
Winbondのもう一つの柱がDDR4である。
SamsungやSK hynix、MicronがDDR4を縮小する一方で、車載、産業機器、通信設備、医療機器、エッジAIでは依然としてDDR4が広く使われている。
需要は残る。しかし供給は減る。
この需給ギャップが棚牡丹的に、Nanyaのおこぼれを頂戴する形でWinbondの収益改善につながっている。AI市場はHBMだけではなく、成熟DRAM市場にも思わぬ影響を与え始めているのである。
SLC NANDにも追い風はきっと吹く
市場は、WinbondのSLC NANDも注目せざるを得なくなった。現在の主力は32nmおよび43nm世代であり、最先端とは言えない。
SamsungやMicronなどの大手メーカーがSLCやMLC市場から徐々に距離を置く中、GigaDevice、MacronixのおこぼれでWinbondにも引き合いが集まり始めている。
もっとも、この市場はNOR Flashほど単純ではない。
成熟市場を得意とする競合企業も多く、ニッチ市場ならではの競争が続いている。
次の「棚から牡丹餅」は何だろうか
WinbondはAI時代を見据えて現在の事業構成を築いた企業ではない。HBMを開発していたわけでもなく、「成熟メモリ戦略」でAI市場を狙っていたわけでもない。
AIブームが始まり、大手メーカーがHBMへ経営資源を集中した結果として、成熟メモリ市場に思いがけない需要が生まれた。
その恩恵を最も大きく受けた企業の一つがWinbondだった。
まさに「棚から牡丹餅」である。
一方で、SLC NAND市場は32nm・43nm世代が主力であり、大手メーカーの撤退による恩恵は受けつつも、MacronixやKioxia、Western Digitalなどニッチ市場を得意とする競合各社がひしめく世界だ。NOR Flashほど分かりやすい追い風とは言えず、今後も競争は続くだろう。
だからこそ気になるのは、Winbondにとって次の「棚から牡丹餅」が何になるのか、という点である。
AIサーバーのさらなる普及で制御用NOR Flashの需要が一段と拡大するのか。
車載やエッジAI向け成熟メモリが新たな成長市場となるのか。
あるいは大手メーカーの成熟メモリ撤退がさらに進み、新たな供給不足が生まれるのか。
HBMが脚光を浴びる一方で、その周辺では成熟メモリが静かに価値を高めている。
AIブームは、思いもよらぬ企業を成金へ押し上げる。その代表例が、台湾のWinbondなのかもしれない。
参考記事
- Winbond 1Q26 Investor Conference
- Winbond 4Q25 Investor Conference
- Exclusive: Winbond NOR Flash reportedly enters Nvidia supply chain(DIGITIMES)


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