台湾が次の兆元(兆台湾ドル)市場として量子コンピュータ産業に本格参入しつつある。鴻海(Foxconn)、廣達(Quanta)、仁寶(Compal)、緯創(Wistron)、台達電(Delta Electronics)など台湾のEMS・ODM大手が量子分野への布石を打つ中、ひときわ注目を集めているのが旺宏電子(Macronix)だ。IBMと長年共同開発してきたPCM(相変化メモリ)技術を強みに、同社はAIに続く量子コンピュータ時代でも次世代メモリの鍵を握る存在として期待されている。本記事では、台湾量子サプライチェーンの最新動向とMacronixが注目される理由を詳しく解説する。
台湾が量子産業を本格始動――次の兆元市場を狙う
トランプ政権の量子推進政策が台湾サプライチェーンを動かす
2026年に入り、米国のトランプ政権が量子運算(量子コンピューティング)を国家戦略技術として位置づけ、複数の行政命令に署名したことで、関連サプライチェーンへの注目が急速に高まった。米国の「量子国家隊」構想を背景に、台湾のサプライチェーン企業群が一斉に商機を模索する動きが顕在化している。
風傳媒の報道によれば、すでに10社超の台湾企業が量子産業への参入を検討または開始しており、台湾全体として半導体製造で培った強みを量子分野に転用しようとする動きが本格化している。
各社の量子戦略:EMSからメモリまで
台湾勢の量子参入は多岐にわたる。
鴻海(Foxconn)は量子機器の統合・システムインテグレーション分野での展開を進めている。量子コンピュータは超低温環境での動作が必要なため、低温対応の制御系や筐体設計において同社の製造能力が活きるとされる。
廣達(Quanta)はIBMとの既存の協力関係を背景に量子商機を模索。データセンター向けサーバー設計の知見を量子サーバーの設計に応用できると期待されている。
仁寶(Compal)・金寶(Kinpo)も量子制御系や関連機器の製造分野で存在感を示しつつある。
緯創(Wistron)は量子関連のポジション取りを積極化しており、台湾EMSの中でも早期参入を目指す姿勢が報じられている。
こうした動きの中で、メモリ専業メーカーとして異色の存在感を放つのが旺宏(Macronix)だ。
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旺宏Macronixの立ち位置――IBMとのPCM協業が生む独自優位
量子コンピュータとメモリの意外な接点
量子コンピュータは演算そのものに量子ビット(qubit)を使うが、制御系や周辺回路には依然として古典的なメモリが必要だ。特に量子誤り訂正や制御信号の高速処理においては、低消費電力かつ高耐久性のメモリが不可欠とされる。PCM(Phase Change Memory、相変化記憶体)はその候補として有力視されており、IBMが長年この技術に注力してきた背景もここにある。
旺宏はIBMのPCM開発における「唯一の合作夥伴(独占的共同開発パートナー)」と報じられており、この関係が量子時代においても大きな意味を持つと見られている。
共同研究の歩み――旺宏とIBMのPCM協業史
旺宏とIBMのPCM共同開発は、一夜にして生まれたものではない。両社の協業は長年にわたって積み重ねられてきた。
2018年、両社はPCM(相変化記憶体)の共同開発契約を継続することを発表した。鉅亨網の報道によれば、双方が研発費(研究開発費)を分担する形での継続合意であり、旺宏の次世代メモリ競争力の強化を目的としていた。CTIMESはこの技術を「Storage Class Memory(ストレージクラスメモリ)」の中核技術と位置づけ、従来のDRAMとNAND Flashの中間に位置する新たなメモリ階層を開拓するものとして報じた。台商產業入口網もこの合意を受け、旺宏が製程(プロセス)強化と次世代メモリの競争力向上を同時に進めていると伝えた。
2023年には、この共同開発が新たなフェーズに入ったことが明らかになった。自由財經の報道によれば、IBMが旺宏との共同開発によるPCMをAI向けの新型チップに活用したとされ、旺宏株が市場で注目を集めた。IBMがPCMをAI用途に転用したことは、単なるメモリ技術の枠を超え、次世代コンピューティング全体における同技術の応用可能性を示すものとして受け止められた。
2026年、量子コンピュータへの関心が高まる中、この長年の協業がさらに注目を集めることになる。經濟日報は、IBMと旺宏の長期PCM協業が量子コンピュータにおける記憶体需要や低消費電力化に直結するとし、旺宏が台湾の量子サプライチェーンの中でも際立った受益者になると報じた。旺宏がIBMのPCM唯一の合作夥伴として、量子運算やAI向けの記憶体需要で恩恵を受けるとする見方が市場でも広がっている。
台湾量子産業の全体像と今後の展望
台湾の量子産業参入は、既存の半導体・EMS産業の強みをそのまま転用できる点で他国と一線を画す。TSMC(台積電)の先端プロセスを活用した量子チップ向けの製造基盤、廣達・仁寶・鴻海らのシステムインテグレーション能力、そして旺宏のような専門メモリメーカーのデバイス技術が有機的に結びつくことで、台湾は量子コンピュータのサプライチェーン全体をカバーできる稀有な産業構造を持つ。
旺宏にとってのPCM技術は、AIブームで再評価され、そして今また量子コンピューティングの文脈でスポットライトを浴びている。半導体メモリの専業メーカーとして、量子時代においても台湾の競争力を支える重要な一角を担う存在として、その動向は引き続き注目に値する。
参考記事
- 川普衝量子運算簽署多項行政命令 鴻海、廣達、仁寶、金寶沾光(經濟日報、2026-05-31)
- 川普政府力挺量子運算鴻海、緯創、仁寶卡位商機(經濟日報、2026-05-24)
- 美量子國家隊旺宏廣達成台鏈要角(DeBuT AI、2026-05-24)
- 量子コンピュータのチップ化へ台湾企業が本格始動(風傳媒日本版、2026-05-03)
- 台湾、量子産業を本格始動 半導体の強み生かし次の兆元市場狙う(風傳媒日本版、2026-05-03)
- 鴻海、廣達、仁寶搶攻量子運算(Yahoo奇摩股市、2025-03-20)
- 旺宏與IBM 將持續開發相變化記憶體(鉅亨網、2018-12-23)
- 研發存儲級記憶體!旺宏與IBM續攻相變化記憶體技術(CTIMES、2018-12-25)
- 旺宏升級製程,繼與IBM合作研發PCM(台商產業入口網、2018-12-25)
- 強勢股》旺宏:聯手IBM開發新記憶體 投信連28買(自由財經、2023-08-29)
- 美量子國家隊台鏈搭上線旺宏、廣達各擁合作優勢(經濟日報、2026-05-24)
- 川普衝量子運算 旺宏實力深厚躍大贏家(經濟日報、2026-06-23)


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