台湾メモリ4社の2026年Q1決算を徹底解説|NANYA過去最高益・WinbondのDRAM急成長・PSMCの実態に迫る

NANYA-Winbond-PSMC-Macronix Logo 半導体メモリ

NANYA・Winbond・PSMC・Macronixの2026年第1四半期決算を徹底分析。DRAM価格回復でNANYAが過去最高益、WinbondはCMS事業が売上の47%を占め急成長。一方でPSMCの黒字転換は工場売却益による一時効果であり本業は赤字継続。各社の月次売上・営業利益・経常利益と現状、今後の注目点を解説。

 台湾メモリ産業を代表する4社——NANYA(南亜科技)、Winbond(華邦電子)、PSMC(力晶)、Macronix(旺宏電子)——の2026年第1四半期(1Q26)決算が出揃いました。
 2022年後半から続いた在庫調整・価格下落のトンネルを抜け、業界全体として急速な回復局面を迎えています。しかしその内実は各社で大きく異なります。
 本稿では、売上・粗利益・経常利益の推移データと、Winbondのセグメント別売上を軸に各社の現状と今後の見通しを考察します。

NANYA(南亜科技)DRAM価格回復の最大受益者。売上・利益ともに過去最高水準へ急騰。
Winbond(華邦電子)CMS(DRAM)が爆発的成長。Flashは伸びるが相対的に弱い。
PSMC(力晶)黒字転換は“工場売却益”による見かけ上。本業は赤字継続。
Macronix(旺宏電子)急騰はないが底堅い回復。最も安定した収益構造。

月別売上高推移:2026年に入り急加速

 まず月次売上高の推移から全体像を把握します。2022年をピークに4社ともに売上が伸び悩みましたが、2025年後半から一斉に上昇に転じました。特にNANYAの急騰が際立ちます。

台湾メモリ4社月別売上高推移
各社開示データをもとに当サイトが作成。

 NANYAは2026年1〜3月にかけて月次売上が爆発的に拡大し、3月には約25兆NTD(千NTD単位)に達しました。Winbondも同期間に約14.5兆NTDへ急伸。一方でPSMCとMacronixの上昇は緩やかで、回復スピードに明確な差が生じています。

営業利益(粗利益)の四半期推移:2023〜2024年の底打ちから急回復

 2022年後半から2024年にかけて、4社ともに赤字に転落しました。しかし2025年後半から形勢が逆転。2026Q1にはNANYAが約3.3兆NTD、Winbondが約2兆NTDを計上するなど、かつてない水準に達しています。

台湾メモリ4社営業利益
各社開示データをもとに当サイトが作成。

 特筆すべきはNANYAの振れ幅の大きさです。2023年には最大で約▲3,500億NTDの粗赤字を記録したのに対し、2026Q1には+3.3兆NTDと、2年余りで約3.6兆NTDのV字回復となっています。これはDRAM価格の急回復と出荷拡大が直接利益に反映されるビジネス構造によるものです。WinbondはLowテクのDRAMでありながら、主要DRAM3社がAIシフトの態勢を整える中で、旧世代DRAMの需要が伸び、比較的安定した推移を経て、1Q26に2兆NTDに達しました。

経常利益の四半期推移:業種間の構造差が鮮明に

 経常利益(営業外損益含む)でも同様のトレンドが確認できますが、注目すべきはPSMCの動きです。PSMCは2026Q1に経常利益が約1.4〜1.5兆NTDと急騰していますが、後述のとおりこれには重要な留保が必要です。

台湾メモリ4社経常利益
各社開示データをもとに当サイトが作成。

 NANYAの経常利益は2026Q1に約3兆NTDに急拡大。Winbondも2025Q4〜1Q26にかけて急上昇しています。PSMCの急騰については次項で詳しく解説します。

各社の個別考察

NANYA(南亜科技):DRAM価格回復の最大受益者

 NANYAはDRAM専業メーカーとして、メモリサイクルに対する感応度が4社中最も高い企業です。2022年後半から始まったDRAM価格の急落では大幅な損失を計上しましたが、AI・データセンター需要の本格化を受けた2025年後半の価格回復で一気に利益が押し上げられました。

 2026Q1の月次売上は約25兆NTD(千NTD単位)と史上最高水準に達し、粗利益・経常利益いずれも過去最大規模を記録。こうした利益の振れ幅の大きさはDRAM専業ビジネスの特性そのものであり、景気回復局面では最も大きなリターンを生む一方、次の下落局面でも最初に打撃を受けるリスクを孕んでいます。

Winbond(華邦電子):DRAM事業が急成長を牽引

 Winbondは NOR Flash・DRAM(CMS:Customized Memory Solution)・Logic ICという3本柱を持つ半導体複合メーカーです。2026Q1の総売上は38,253百万NTDと1Q24比で約1.9倍に拡大。この成長を主導しているのはDRAM(CMS)事業です。

Winbond四半期ごと売上推移
出典:Winbond 2026Q1 決算資料

 CMS(DRAM)の売上は1Q24の約5,231百万NTDから1Q26の約17,979百万NTDへと約3.4倍に急増し、売上全体に占める比率も26%から47%へと跳ね上がっています。これがWinbond急成長の主因です。

Winbond四半期ごと売上推移Flash Memory
Winbond 2026Q1 決算資料より。
WinbondのNAND、NOR売上割合
Winbond 2026Q1 決算資料より作成。

 一方、Flash事業は相対的に伸び悩んでいます。絶対額では1Q24の約6,036百万NTDから1Q26の約12,241百万NTDへと約2倍に増加しましたが、構成比は30%→32%と横ばい気味であり、CMS事業の急拡大に追いついていません。Flash事業の底上げが今後の焦点となります。レガシーノードのLogic ICは売上自体は安定しているものの、構成比は42%から21%へと低下。全体の成長をCMSが引き上げた結果、相対的に存在感が薄れています。

PSMC(力晶積成):「黒字転換」は表層、実態は本業赤字継続

 PSMCの2026Q1決算は一見すると印象的な黒字転換に見えます。経常利益は約142億NTD(14,226,108千NTD)、当期利益は約142億NTDを計上しました。しかし、この数字には重大な注釈が必要です。

黒字の正体:工場売却益による一時的利益
2026Q1の損益計算書には「その他営業収益」として約153億NTD(15,367,559千NTD)が計上されています。これが工場売却益であり、この一時的特別利益を除くと経常損失は約11億NTDの赤字となります。

 ファウンドリー(受託製造)専業というビジネスモデル上、NANYAのようなメモリ価格回復の直接恩恵は得られにくく、本業の改善は2026年以降の課題として残っています。

PSMC 2026Q1決算報告書
PSMC工場未売却の場合との決算比較

工場売却益を除いた時の決算は、赤字に陥る。

Macronix(旺宏電子):安定基盤、緩やかな回復

 Macronixは車載・産業機器向けNOR/NAND Flashに強みを持つ専業メーカーです。2023〜2024年の下落局面でも他社ほど深刻な赤字には陥らず、底堅さを見せました。2026Q1は月次売上で約60億NTD、粗利益でも約45億NTDと着実に回復していますが、NANYAやWinbondのような急騰はなく、穏やかな改善にとどまっています。成熟した需要基盤と安定したマージン構造が特徴で、スペキュラティブな上下動よりも持続的な収益力が評価軸となります。

総括と今後の注目点

 台湾メモリ4社の2026Q1決算は、業界全体としての急回復を示すと同時に、各社の事業特性に応じた明暗をくっきりと映し出しています。

  • NANYAはDRAM専業ゆえの最大受益者。ただしサイクル感応度も最大であり、価格動向から目が離せません。
  • WinbondはCMS(DRAM)事業の急成長が全体を牽引。Flash事業は出遅れている。微細化ノードの製品がないことによる巻き返しはいかほどか。
  • PSMCの「黒字」は工場売却による一時効果。本業の回復はまだ途上にあり、継続的な営業利益の改善が見られるまで評価は慎重であるべきでしょう。
  • Macronixは安定した回復軌道。大きな驚きはないものの、長期保有に適した安定型プロファイルを維持しています。

 今後の最大の焦点は、2025年後半〜2026年の急回復がAI・IoT・車載需要に裏打ちされた構造的な成長なのか、一時的ブームなのか、という点です。DRAMスポット価格は天井圏が見え始めているので、NANYAのDRAM設備投資計画と状況が、業界の持続性を測る試金石となるでしょう。

※本記事のチャートは各社開示データをもとに当サイトが作成した参考値です。投資判断は最新の公式開示情報をご確認ください。
NANYA(南亞):https://www.nanya.com/
Winbond(華邦):https://www.winbond.com/
PSMC(力晶):https://www.powerchip.com/
Macronix(旺宏電子):https://www.mxic.com.tw/

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