SamsungはFMS 2026で、400層超の第10世代3D NAND「V10 BV-NAND」を発表し、AI向けストレージ市場で次世代技術をアピールしました。一方、Kioxia・SanDiskは332層BiCS10、SK hynixは321層3D NAND、MicronやYMTCも独自技術で開発を加速しており、3D NAND競争は新たな局面を迎えています。では、積層数が最も多いSamsungが本当に技術的に優位なのでしょうか。
本記事では、各社の最新3D NANDを積層数だけでなく、ビット密度、消費電力、I/O性能、製造技術まで多角的に比較し、AI SSD時代の競争力と今後の市場動向を詳しく解説します。
Samsungが400層超「V10 BV-NAND」をFMS 2026で公開
SamsungはFMS 2026で、第10世代3D NANDとなるV10 BV-NAND(Bonded Vertical NAND)を発表しました。
最大の特徴は、従来の積層構造をさらに進化させたBV(Bonded Vertical)アーキテクチャの採用です。
セルアレイと周辺回路(CMOS)を別々のウェーハで製造し、高精度なウェーハボンディング技術によって接合することで、
- 400層超の超高積層化
- 高密度化
- 消費電力の低減
- 製造歩留まりの改善
を同時に実現することを目指しています。
Samsungによると、第9世代V-NANDと比較して、ビット密度は約58%向上するとされています。
「BV-NAND」とは何か?
BV-NAND(Bonded Vertical NAND)は、Samsungが次世代NAND向けに採用した新しい製造アーキテクチャです。
従来はセルアレイとCMOS回路を同一ウェーハ上で形成していました。
一方BV-NANDでは
- セルアレイ
- CMOS周辺回路
をそれぞれ最適なプロセスで製造し、最後にウェーハ同士を直接接合します。
この方式には以下のメリットがあります。
- 超高積層化への対応
- 製造工程の柔軟性向上
- 配線長の短縮
- 消費電力の削減
- ビット密度向上
400層を超える世代では、このようなウェーハボンディング技術が不可欠になると考えられています。
SamsungのAIメモリ戦略
SamsungはFMS 2026でV10 BV-NANDだけではなく、
- zNAND-O
- zHBM
- AI SSD
などAI向けストレージ製品群も発表しました。
同社はHBMだけではなく、AIサーバー向けストレージ市場でもリーダーシップを確立する戦略を進めています。
特に生成AIでは、大容量データを高速に読み書きできるSSD需要が急速に拡大しており、高性能3D NANDの重要性は今後さらに高まると予想されます。
主要メーカー最新3D NAND比較
| メーカー | 最新世代 | 積層数 | 量産状況 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Samsung | V10 BV-NAND | 400層超 | 開発発表 | BV-NAND・ウェーハボンディング |
| Kioxia / SanDisk | BiCS10 | 332層 | 2026年末〜2027年初量産予定 | CBA(CMOS directly Bonded to Array) |
| SK hynix | 第9世代 | 321層 | 開発済み | 4D NAND |
| Micron | 第9世代 | 276層 | 量産中 | 高速I/O・低消費電力 |
| YMTC | Xtacking世代 | 300層級開発 | 開発中 | Xtackingアーキテクチャ |
この表を見ると、Samsungは積層数で一歩リードしているように見えます。
しかし、実際の競争は単純な積層数だけでは決まりません。
近年は、
- 記録密度(Bit Density)
- I/O速度
- 消費電力
- レイテンシ
- 歩留まり
- 製造コスト
などがAIストレージ市場において重要な評価指標となっています。
Kioxia・SanDiskは332層「BiCS10」で高密度化を追求
Samsungが400層超というインパクトのある数字を打ち出した一方で、KioxiaとSanDiskは異なるアプローチで競争力を高めています。
両社が共同開発する第10世代3D NAND「BiCS10」は332層構造を採用し、2026年末から2027年初頭の量産開始を予定しています。
BiCS10最大の特徴は、CBA(CMOS directly Bonded to Array)技術です。
CMOS回路とメモリセルを別ウェーハで製造し、直接接合することで高密度化と高速化を両立しています。
さらにBiCS10では、
- 業界トップクラスのビット密度
- 高速I/O性能
- 消費電力の低減
- 製造効率の改善
を実現すると発表されています。
Samsungが積層数を重視しているのに対し、Kioxia・SanDiskは「限られた積層数でも高密度化を実現する設計思想」を採用している点が大きな違いです。
SK hynixは321層「4D NAND」で歩留まりを重視
SK hynixは第9世代321層3D NANDを開発済みであり、今後のAI向けSSD市場を見据えています。
同社の特徴は4D NANDと呼ばれる独自アーキテクチャです。
Peripheral Circuit Under Cell(PUC)構造を採用することで、
- チップ面積の縮小
- 高密度化
- 消費電力削減
- 製造コスト低減
を実現しています。
SamsungがBV-NAND、KioxiaがCBAを採用する一方で、SK hynixは成熟した4D NAND技術を進化させることで競争力を維持しています。
AIサーバー向けSSDでは、大容量化だけでなくコスト競争力も重要であり、SK hynixは量産性を強みとしています。
Micronは276層でも性能競争力を維持
Micronの最新3D NANDは276層であり、積層数ではSamsungやKioxiaに及びません。
しかし、Micronは単純な積層競争ではなく、
- 高速I/O
- 低レイテンシ
- 高い電力効率
- 高い歩留まり
を重視しています。
AIサーバーでは、大量のデータを高速に読み書きできることが重要であり、必ずしも積層数が多ければ有利というわけではありません。
このためMicronは、コントローラー技術やインターフェース性能を含めたシステム全体の最適化によって競争力を確保しています。
YMTCはXtacking技術で追撃
中国最大手のNANDメーカーであるYMTCは、独自のXtackingアーキテクチャを採用しています。
XtackingもSamsungのBV-NANDやKioxiaのCBAと同様に、
- メモリアレイ
- CMOS周辺回路
を別々に製造し、高精度に接合する技術です。
この構造により、
- 高速I/O
- 高密度化
- 製造効率向上
を目指しています。
米国の輸出規制の影響を受けながらも、中国市場向けを中心に300層級製品の開発を進めており、今後の技術動向が注目されています。
積層数だけでは競争は決まらない
3D NANDでは「積層数」が注目されがちですが、AI時代ではそれだけで優劣は決まりません。
実際に重要となる指標は次のようなものです。
| 比較項目 | 重要性 |
|---|---|
| 積層数 | 容量拡大・マーケティング効果 |
| ビット密度(Bit Density) | チップ面積当たりの記録容量 |
| ダイサイズ | コスト・歩留まりに直結 |
| I/O速度 | AIデータ処理性能 |
| プログラム速度 | SSD性能 |
| 読み出しレイテンシ | AIワークロード |
| 消費電力 | データセンター運用コスト |
| 歩留まり | 量産性 |
| 製造コスト | 利益率 |
| 信頼性 | 企業向けSSD品質 |
例えば、400層を超えてもダイサイズが大型化すればコスト競争力は低下します。
一方、積層数が少なくてもビット密度が高く、歩留まりに優れる製品は市場で十分な競争力を持ちます。つまり、今後の3D NAND競争では「何層積んだか」よりも、「どれだけ効率良く記録できるか」が重要になっていくと考えられます。
各社の技術戦略比較
| メーカー | 技術戦略 | 強み | 課題 |
|---|---|---|---|
| Samsung | BV-NAND・ウェーハボンディング | 積層数・ブランド力・AIメモリ製品群 | 超高積層での歩留まり確保 |
| Kioxia / SanDisk | CBA・BiCS10 | 高ビット密度・省電力 | Samsungとの積層数競争 |
| SK hynix | 4D NAND | 成熟技術・量産性・コスト競争力 | さらなる高密度化 |
| Micron | 高速I/O・システム最適化 | 低消費電力・高速性能 | 積層数では見劣り |
| YMTC | Xtacking | 高速接合技術・中国市場 | 輸出規制・先端装置調達 |
AI時代の3D NAND競争は「総合力」の時代へ
生成AIやAIデータセンターの普及により、SSDにはこれまで以上に高い性能が求められています。
重要なのは、
- 大容量
- 高速I/O
- 低レイテンシ
- 低消費電力
- 高信頼性
- 製造コスト
を高いレベルで両立することです。
Samsungは400層超V10 BV-NANDによって技術的な先進性を示しましたが、Kioxia・SanDiskのBiCS10、SK hynixの4D NAND、Micronの高速I/O技術、YMTCのXtackingなど、各社はそれぞれ異なるアプローチで競争力を高めています。
今後の市場では、「積層数世界一」という称号だけでなく、AIシステム全体で最適な性能を提供できるメーカーが優位に立つ可能性が高いでしょう。
まとめ
FMS 2026でSamsungが発表した400層超のV10 BV-NANDは、3D NANDの高積層化が新たな段階に入ったことを示しました。一方で、Kioxia・SanDiskの332層BiCS10やSK hynixの321層4D NAND、MicronやYMTCの独自技術も着実に進化しており、各社の技術戦略は多様化しています。
今後の競争軸は、積層数そのものではなく、ビット密度、I/O性能、消費電力、歩留まり、そしてAIデータセンター全体での運用効率へと移っていくでしょう。
3D NAND市場は、単なる「積層数競争」から「総合性能競争」の時代へと本格的に移行しつつあります。


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