NANDフラッシュ市場は、AIデータセンター投資の拡大を背景に2026年も供給不足が続く一方、2027年後半には需給バランスが改善へ向かう転換点を迎える見通しです。TrendForceの最新市場予測では、AIサーバー需要の拡大や3D NANDのプロセス移行が市場構造を変える一方、SLC NANDやNORフラッシュは構造的な供給不足により価格高騰が続くと分析しています。
本記事では、2026~2027年の需給予測や価格動向に加え、AIサーバー需要が市場をけん引する理由や中国メーカーのシェア拡大が市場へ与える影響について、最新データをもとに多角的に分析・解説します。
2026年のNAND市場、需給逼迫はなぜ続くのか
TrendForceの調査によれば、2026年のNAND型フラッシュメモリ市場は、AI関連需要の急拡大と設備投資の制約が重なり、年間を通じて供給不足の状態が続くと分析している。背景にあるのは、各社がDRAM向けの生産能力確保を優先していることだ。NANDメーカーは新規のファブ増設よりも、既存ラインでのプロセスノード移行によるビット出力の底上げを優先しており、この傾向は2027年にも持ち越される見通しである。
結果として、TrendForceはNAND市場が2026年に4〜5%の供給不足に陥ると試算している。モジュールメーカー側では消費者需要の低迷を背景に在庫が積み上がっているものの、それ以外の顧客層の在庫水準はおおむね健全な範囲に収まっているという。
韓国・米国・日本勢は増産より最適化、中国勢はシェア19%に接近
供給側の動きにも地域差が見られる。韓国・米国・日本のサプライヤーは、既存生産ラインのアップグレードと選択的な増産にとどめる方針を取る一方、中国メーカーは新規製造装置の稼働により生産能力を大きく積み増す計画だ。TrendForceは、この結果として中国勢のNAND型フラッシュ世界ビット出力シェアが約19%まで上昇すると予測している。地政学的な供給網の分散が進む中、中国勢の存在感がさらに増していく可能性が高い。
2027年後半に転機、供給が需要を上回る
2027年に入ると状況は変わり始める。サプライヤー各社によるプロセス移行の進展、ビット出力の着実な増加、そして民生機器分野の需要低迷が重なることで、需給バランスは徐々に回復方向へ向かう。TrendForceは、この結果として2027年後半に需給バランスがプラスに転じ、供給制約が緩やかに解消されていくとみている。
サーバー需要は2027年も引き続き堅調だ。特に注目されるのは、Agentic AIアプリケーションの商用化が汎用サーバー需要を下支えする点である。加えて、サーバー向けCPUの供給制約緩和や、長期供給契約(LTA)に基づくメモリ供給の安定化といった要因が、システム生産のボトルネックを取り除くとTrendForceは指摘する。これらが揃うことで、2027年のサーバー出荷成長はさらに加速する見通しだ。

サーバー需要がけん引役に、Intel・AMD新プラットフォームが後押し
2026年後半には、IntelとAMDの次世代サーバープラットフォームの出荷が加速する見込みだ。この動きを受けて、TrendForceはサーバー出荷が2026年通期で前年比17%増になると予測している。NAND型フラッシュ需要に占めるサーバーの比率はすでに40%を超えており、AIデータセンター投資の拡大がNAND市場全体の成長を主導する構図が続いている。
スマートフォン・ノートPC需要は低迷が継続
一方、民生機器市場は依然として厳しい状況にある。TrendForceは2026年の世界スマートフォン生産が前年比15〜20%減少すると予測している。AI対応のプレミアムスマートフォンが高価格帯の需要を下支えするものの、末端市場の需要回復は限定的で、消費者の価格感応度も高まっていることから、2027年も生産減少は続く見通しだ。ただし減少幅は2026年より緩やかになるとみられる。
ノートPC市場も同様に圧迫が続く。2026年の出荷は約10%減少すると見込まれ、2027年もメモリやCPUの高止まりしたコストを背景に、小幅な減少が続く可能性が高い。
TrendForceが強調するのは、サーバーが全体需要の40%超を占める一方で、スマートフォンとノートPCを合わせた需要も依然として全体の40%近くに達しているという点だ。つまり、民生市場の動向は今もNAND市場全体の需給を左右する重要な変数であり続けている。
SLC NAND・NORフラッシュは構造的な高騰局面
サーバー向けの高付加価値製品にNANDメーカーの生産能力が集中する一方、成熟プロセス品であるSLC NANDやNORフラッシュは深刻な供給不足に直面している。TrendForceの別レポートによれば、車載・産業用途などで高い信頼性が求められるSLC NANDの契約価格は、2026年下半期に上半期比で120〜170%上昇すると見込まれている。背景には、MLC NANDの品薄と価格高騰を受けて、一部の産業・車載向け顧客がSLC NANDへ移行する動きがある。
さらに遡ると、2026年上半期の時点ですでにNORフラッシュとSLC NANDの契約価格はいずれも累計で100%を超える上昇を記録していた。TrendForceは、メモリ大手各社がHBMや高層3D NANDといった高付加価値製品へ生産能力を優先配分していることが、この構造的な供給不足の根本原因だと分析している。サプライヤー側に大規模な増産計画が見られないことから、この傾向は当面続くとみられる。
まとめ|NAND市場は2027年後半まで我慢比べが続く
TrendForceの最新分析を総合すると、NAND型フラッシュメモリ市場は次のような展開をたどると考えられる。
- 2026年:AI関連需要とDRAM優先の生産能力配分により、供給不足(4〜5%)が継続
- 2026年後半〜2027年前半:サーバー需要が市場をけん引する一方、成熟プロセス品(SLC NAND・NORフラッシュ)は構造的な高騰が続く
- 2027年後半:プロセス移行によるビット出力増と民生需要の弱含みが重なり、需給バランスがようやく改善
AIデータセンター投資が市場全体を押し上げる構図は当面変わらないが、サーバーとコンシューマー機器という二つの需要の綱引きが、今後の価格動向を左右する鍵となりそうだ。
参考記事
- NAND Flash Supply Growth to Outpace Demand in 2027, Easing Supply Constraints in 2H27, Says TrendForce
- Niche Demand and MLC Migration to Drive SLC NAND Prices up 120–170% in 2H26, Says TrendForce
- Contract Prices Surged More Than 100% in 1H26; Structural Shortages to Keep NOR Flash and SLC NAND Prices Rising in 2H26, Says TrendForce


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