MLC NAND価格が2025年末比3倍超に急騰|2D NAND供給崩壊で、台湾マクロニクス(Macronix)が急伸

NANDフラッシュメモリ市場動向 半導体メモリ

メモリ市場が激震!MLC NANDのスポット価格が2025年末比で3倍超に急騰。サムスン・キオクシアの相次ぐ撤退が引き金となったこの大波乱、業界全体の地殻変動を徹底解説します。



MLC NANDスポット価格、わずか数ヶ月で3倍超に跳ね上がる

2026年のNANDフラッシュ市場は、かつてない供給ショックに揺れています。64Gb MLC NANDのスポット価格は2025年末から300%超上昇し、直近では1個あたり20〜28ドルで取引されているとChosun Ilboが報じています。

背景にあるのは、主要メモリメーカー各社による「2D NAND撤退」の加速です。HBM(広帯域メモリ)や高積層3D NANDへのキャパシティ集中が進む中、汎用・低容量帯のNANDが急速に市場から消えつつあります。

MLC(Multi-Level Cell)とは?
1セルに2ビットを格納する方式。TLC(3ビット)やQLC(4ビット)と比べ容量は劣るものの、データ保持性・耐久性に優れ、産業機器や車載・組み込み用途で重宝されてきた。

主要プレイヤーが続々と2D NAND生産から撤退

サムスンは2026年3月、華城(Hwaseong)12ラインでの2D NAND生産を段階的に停止し、同サイトを1c世代DRAMのエンドファブへ転換すると発表。月産8〜10万枚規模の2D NANDウェハ生産能力が、来月の最終出荷をもって消滅します。

キオクシア:2029年に完全撤退へ

キオクシアは2026年3月31日に製品EOL(生産終了)通知を発行。フローティングゲートおよび第3世代BiCS FLASHの一部製品について、2026年9月末までに最終受注を受け付け、2028年12月に最終出荷を完了し、2029年以降は2D NANDおよび第3世代BiCS FLASHから完全撤退する方針です。

SK hynix・マイクロン:現状維持にとどまる

両社とも既存顧客向けの生産は継続しているものの、積極的な増産には動いていません。マイクロンはさらに、コンシューマー向けブランド「Crucial(クルーシャル)」の終了も発表しており、レガシー製品市場からの撤退姿勢を鮮明にしています。

TrendForce予測:2026年のグローバルMLC NAND生産能力は前年比41.7%減。供給逼迫はまだ序章にすぎません。

台湾マクロニクスが”漁夫の利”を獲得——売上382%増の衝撃

大手が抜けた穴を猛然と埋めているのが、台湾のマクロニクス(Macronix)です。

サムスンのMLC NAND撤退を受け、マクロニクスのNAND売上シェアは21%→30%に急拡大。2026年第1四半期のNAND売上高は前年同期比382%増、前四半期比90%増という驚異的な数字を叩き出しました。

さらに同社のeMMC売上も前四半期比94%増・前年同期比約40倍という非常識なペースで急伸。これはキオクシアとマイクロンのSLC NAND撤退が生み出した代替需要を丸ごと取り込んでいるためです。

2026年Q1決算ハイライト

指標 数値 前年同期比
連結売上高 NT$104.69億 +71%
粗利益率 40.8% +16.6pt
純利益 NT$17.79億
EPS NT$0.90

価格設定戦略も大きく転換。従来の四半期ベースから月次交渉モデルへ移行し、急変するマーケット環境にリアルタイムで対応しています。同社の呉敏求会長は「NORおよびSLC NANDの契約価格は2026年第2四半期に約100%上昇する見通し」とコメントしており、価格高騰の波はまだ続きそうです。

メモリ業界の”大軍拡”——高積層3D NANDへの熾烈な競争

大手が2D NANDから手を引く一方で、次世代競争は激しさを増しています。

  • サムスン:2024年4月に9世代286層NAND(V9)の量産を開始。次のターゲットは400層クラス(V10)
  • SK hynix:すでに321層NANDを量産・顧客供給中。積層数でサムスンをわずかにリード。
  • キオクシア:2026年頃を目標に第10世代332層NANDの量産を計画。AWS・マイクロソフトなどハイパースケーラー向けにAI対応高速ストレージとして売り込む方針。

生成AIブームが押し上げるストレージ需要は、各社の開発競争をさらに加速させています。


業界・投資家へのインプリケーション

今回の構造変化が示唆するポイントを整理します。

  1. 産業・車載向け機器メーカー:MLC NANDの調達コスト急騰は避けられない見通し。代替部品の選定や在庫戦略の見直しが急務。
  2. ニッチプレイヤーの台頭:マクロニクスのように特定セグメントに特化した中堅メーカーが、大手の撤退後に急成長するパターンが鮮明化。
  3. 調達担当者:キオクシアの最終受注期限(2026年9月末)を念頭に、長期供給確保の行動が必要。
  4. AI・クラウドインフラ:高積層3D NANDの競争激化は、大容量・高速ストレージのコスト低下につながる可能性も。

まとめ:「2D NAND終焉」という時代の転換点

MLC NANDスポット価格の3倍超急騰は、単なる一時的な需給ミスマッチではありません。これはサムスン・キオクシアをはじめとする大手が「もうレガシー製品には投資しない」という戦略的決断を下した結果であり、産業用・組み込み向けメモリ市場の構造転換を象徴する出来事です。

2029年のキオクシア完全撤退を見据え、市場はすでに次のフェーズへ移行しつつあります。この波に乗れるか、飲み込まれるか——判断を迫られる時間は、思いのほか短いかもしれません。


本記事は公開情報をもとにした解説記事であり、投資助言を目的とするものではありません。

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