ストレージ技術 / 2026年5月21日
エンタープライズストレージ ファーウェイ SSD DoB技術最新の3D NAND製造技術へのアクセスを米国の輸出規制によって阻まれているファーウェイが、独自の「Die-on-Board(DoB)」パッケージング技術を武器に、122TBという驚異的な容量のSSDを量産体制に乗せた。制裁という制約をイノベーションへの動機に変えた、注目すべき技術的飛躍だ。
DoBとは何か?
DoB(Die-on-Board)は、NANDダイをパッケージに封入してから基板に実装するという従来の工程を省き、ダイを直接プリント基板(PCB)上に搭載するウェハーレベルパッケージング技術だ。サムスン(V-NAND)、キオクシア・SanDisk(BiCS)、マイクロンといった主要メーカーは、TSOPやBGAなどのパッケージにダイを封入したうえで基板に実装する手法をとっている。
ファーウェイは米国エンティティリストに掲載されているため、米国技術を用いた最先端の3D NANDへのアクセスが制限されており、在庫が尽きた後はYMTCなど中国製NANDに頼らざるを得ない。従来のTSOPやBGAパッケージングでは競合他社と比べ容量面で不利になるため、ボードレベルのパッケージング技術革新に活路を見出した。
DoB技術によって、ファーウェイは従来比33%の容量密度向上を達成。NANDチップの高密度実装とコスト低減を同時に実現した。課題として挙げられる熱管理と信号完全性についても、独自設計で克服しているという。
「制裁による技術調達の制限が、むしろボードレベルの革新を加速させた——ファーウェイの事例は、制約がイノベーションの母になりうることを示している。」
製品ラインナップと主要スペック
2026年5月にパリで開催された Huawei ID Forum 2026 において、3種類のAI対応SSD(560シリーズ)が発表された。
特筆すべきはAI統合アーキテクチャだ。SSDのメインコントロールチップにAIアクセラレーションユニットを内蔵することで、ストレージと演算処理の同時実行を実現。データ転送時のエネルギー消費を最大80%削減するという。
容量密度:現在地と課題
DellがキオクシアのLC9(E3.Lフォームファクター)を用いて2Uシャーシに10PBの生容量を実現しているのに対し、ファーウェイのOceanDiskは手のひらサイズの独自フォームファクターで4.42PBにとどまる。245TBのNAND(キオクシアなどがハイパースケーラー向けにサンプル提供中)との差は依然として存在するが、DoB技術によって大きく追いついたことは確かだ。
製品比較:ファーウェイ vs. 競合
| 項目 | ファーウェイ(DoB) | Dell + Kioxia LC9 |
|---|---|---|
| 最大SSD容量 | 122.88 TB(量産中) | 245.88 TB |
| 2U生容量 | 4.42 PB | 10 PB |
| インターフェース | PCIe Gen 5 NVMe | E3.L NVMe |
| フォームファクター | 独自(手のひらサイズ) | 業界標準 E3.L |
| NAND調達先 | YMTC(中国製) | キオクシア(日本製) |
| 容量密度改善率 | 従来比 +33%(DoB効果) | 業界標準パッケージング |
まとめ:制約が生んだ差別化技術
米国エンティティリスト掲載により最先端の3D NANDへのアクセスを断たれたファーウェイは、ボードレベルの革新で正面突破を図った。DoBは現時点で容量面においてキオクシア等の最新品に追いついていないものの、AIアクセラレーションの内蔵や高い容量密度改善率など、独自の付加価値を持つ技術だ。
将来的にLC 560の245TB版が量産化されれば、エンタープライズストレージ市場における競争構図はさらに変化しそうだ。DoB技術の進化から今後も目が離せない。


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