NVIDIAの新型CPU「Vera」をAI検索企業Perplexityが正式採用した。GPUに続いてCPU市場でもIntel・AMDへ本格攻勢をかけるNVIDIAの戦略は、TSMC(台積電)の最先端プロセス需要を押し上げる新たな成長要因として注目を集めている。さらにOpenAIやAnthropic、Oracleも導入を予定しており、AI半導体の勢力図は大きな転換点を迎えつつある。本記事では、Vera CPU採用の背景と技術的優位性、TSMC(台積電)への波及効果、Intel・AMDとの競争、RISC-Vとの関係まで詳しく解説する。
更新日:2026年7月9日 出典:経済日報(UDN Money)ほか、詳細は本文末尾の「参考記事」を参照
Perplexityが輝達(NVIDIA)Vera CPUを正式採用 AI新興企業からの支持が拡大
AI検索スタートアップのPerplexityが、NVIDIAの最新CPU「Vera」の採用を明らかにした。Perplexityは株主構成の詳細を公表していないが、NVIDIAは同社の戦略的出資先の一つとされ、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOも以前からPerplexityのサービスを愛用していると述べている。両社の関係の深さが、今回の採用にもつながったとみられる。
NVIDIAはVera CPUについて、今会計年度末までに約200億米ドルの売上を生み出すと見込んでいる。すでにOpenAI、Anthropic、Oracleといった大手AI・クラウド企業もVera CPUの導入を計画していることを明らかにしており、Perplexityの採用はこの流れをさらに後押しする形となった。
Perplexity幹部が語るVera CPUの性能優位性
Perplexityで企業向け演算基盤を統括するNate Kupp副社長は、AIエージェントによるコーディング作業の実行速度が従来型CPU比で1.5倍に達すると説明し、Vera CPUが自社の中核ワークロードに適していると評価した。ただし具体的な調達数量については明らかにしていない。
輝達(NVIDIA)がCPU市場に参入する狙い-Intel・AMD寡占市場への挑戦
CPU市場はノートPC、デスクトップ、サーバーに至るまで長年Intel・AMDが寡占してきた領域だ。NVIDIAはこの市場に対し、GPUで培ったAI性能を武器に本格参入を進めている。ジェンスン・フアンCEOは、Vera CPUは「AIエージェントのために設計した」と強調しており、単なるシェア争いではなく、AIエージェント時代に最適化された新しいCPUのカテゴリーを自ら創出する狙いがあると説明している。
NVIDIAはすでにAI向けCPU「Grace」で先行しており、後継となるVera CPUは、AI用途で世界最高水準の人気を誇るCPUを目指すという。その人気度は、同社のGPU製品を上回る可能性すら示唆されている点が興味深い。
Vera CPUの技術的特徴:Olympusコアと性能指標
Vera CPUの中核を成すのは「Olympus」コアで、1サイクルあたりの命令処理数はGrace CPU比で50%向上しているという。またAIエージェントによるフル稼働ワークロードにおいて、1コアあたりの持続性能はx86系CPU比で1.8倍に達するとNVIDIAは説明する。従来のデータセンター向けCPUは大規模環境下での速度を前提に設計されていなかったとし、大規模運用でも高いシングルスレッド性能を維持できる点が新しいCPUカテゴリーの核心だとしている。
AIエージェントにとってはツール実行速度が体感速度に直結するため、CPU側の処理速度がエージェントのタスク完了速度を左右するという発想が、Vera CPUの設計思想の背景にある。
次世代Rosa CPUへの布陣ロードマップ
NVIDIAは、次世代コア「Rigel」を搭載する後継製品「Rosa CPU」の投入も予告しており、エージェント型AI時代に向けたCPUロードマップを継続的に更新していく方針だ。データセンター向けCPU戦線は、単発の製品投入ではなく複数世代にわたる長期戦略として位置付けられている。
TSMC(台積電)最先端プロセスへの波及効果-受注熱転の背景
NVIDIAが設計するGPU・CPUはいずれもTSMC(台積電)の最先端プロセスに大きく依存している。業界では、Vera CPUの採用企業が拡大するほどNVIDIAからTSMC(台積電)への投入枚数(ウエハー投入量)も増加し、最先端プロセスの受注が一段と活況を帯びると見られている。実際、記事公開前日のTSMC(台積電)株価は25台湾ドル高の2,465台湾ドルで取引を終えており、市場もこの追い風を織り込みつつある。
| 項目 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| Vera CPU想定売上 | 今会計年度末までに約200億米ドル | 成長ドライバー |
| 主要採用予定企業 | Perplexity、OpenAI、Anthropic、Oracle | 需要拡大の裏付け |
| Perplexityの性能評価 | AIエージェント処理速度が従来型CPU比1.5倍 | 採用の決め手 |
| Intel・AMDへの影響 | 長年のCPU寡占市場に競合が本格参入 | 競争構造の変化 |
| TSMC(台積電)株価 | 前日比25台湾ドル高の2,465台湾ドル | 市場の織り込み |
NVIDIAのGPUとCPUがいずれもTSMC(台積電)の最先端プロセスを前提に設計されている以上、Vera CPUの顧客基盤拡大は、GPU事業とは独立したもう一つの受注チャネルとしてTSMC(台積電)の業績を下支えする構図になる。CPU単体としての採用拡大が、結果的に半導体製造の最上流であるファウンドリー側の需要創出につながっている点は、AI半導体サプライチェーン全体を理解するうえで見逃せないポイントだ。
RISC-Vとの関係を考察する-オープンアーキテクチャの行方
Vera CPUの主要演算コア「Olympus」は、Grace CPUの系譜を継ぐArmベースの設計であり、RISC-Vではない。したがって今回のPerplexity採用は、Armアーキテクチャ陣営の存在感をさらに強める出来事だと言える。もっとも、NVIDIAとRISC-Vとの関係は無縁ではない。同社はGPU内部のファームウェア制御や電源管理といった補助的な処理領域で、以前からRISC-Vベースの独自コアを組み込んできた実績があり、主要演算コアとは別のレイヤーでRISC-Vを実用してきた経緯がある。
一方で業界全体を見渡すと、米中の輸出管理を背景に、中国をはじめとする一部地域ではライセンス費用が不要でカスタマイズ性の高いRISC-Vを独自AIチップの基盤に採用する動きが進んでいる。NVIDIAがArm陣営の主要CPUで存在感を高める一方、RISC-Vは政治的・コスト的な事情から独自チップを設計したい企業や国家にとっての選択肢として、異なる文脈で勢力を広げつつある。両者は当面、競合というより住み分けが進む形で共存していく可能性が高いと見られる。
まとめ:AI時代のCPU競争が示す半導体産業の構造変化
Perplexityの採用表明は、NVIDIAがGPU一強からCPU市場への本格参入を進めるうえでの一つの節目と言える。OpenAIやAnthropic、Oracleといった大手勢の導入検討と合わせ、Vera CPUの顧客基盤は着実に広がりつつある。そしてこの動きは、製造委託先であるTSMC(台積電)の最先端プロセス受注をも押し上げる構図を生んでおり、AI半導体サプライチェーン全体の需要拡大につながっている。今後、Intel・AMDがどのように対抗策を打ち出すのか、またRosa CPUをはじめとする次世代ロードマップがどこまで実現するのか、引き続き注視が必要だ。


コメント