中国ガリウム輸出規制の最新動向|対日輸出一部再開でも価格高騰、AI半導体への影響続く

中国ガリウム輸出規制の最新動向|対日輸出一部再開でも価格高騰、AI・光半導体への影響を徹底解説 先進パッケージング・半導体材料

中国のガリウム輸出規制は本当に緩和されたのか──。2026年5月、中国から日本へのガリウム輸出が約4カ月ぶりに確認されたことで「規制緩和」と受け止める見方も広がった。しかし実際には輸出許可制は継続され、価格は規制前の約3倍という高水準が続いている。さらに2026年7月には通報制度が導入され、第三国経由の迂回輸出への監視も強化された。

本記事では、中国ガリウム輸出規制の最新動向をはじめ、対日輸出一部再開の実態、価格高騰の背景、AI・光半導体(CPO)サプライチェーンへの影響、IEAが警鐘を鳴らす供給リスク、日本企業への影響と今後の見通しをわかりやすく解説する。

ガリウム輸出は「部分再開」、しかし許可制は継続

中国税関のデータによると、2026年5月に中国から日本へ6,000キログラムのガリウムが輸出され、同月における中国の対日ガリウム輸出はこれが唯一だったことがベトナム通信社系メディアの報道(6月20日発表分)で明らかになった。この輸出は、2026年1月6日に中国商務省が公布した日本向けデュアルユース品目の輸出管理強化措置以降、約4カ月ぶりの動きだったとされる。

ただし、これは規制の全面解除を意味しない。1月の措置は、東洋経済オンラインが伝えたとおり、日本の軍事関連エンドユーザーや軍事目的、日本の軍事力向上につながる最終用途への輸出を禁止し、第三国・地域経由の迂回輸出にも規制の網をかけるという、対象範囲の広い制度である。今回確認された6,000キログラムの輸出は、あくまでこの許可制の枠内で個別に承認された民生用途分とみられ、許可証を必要とする制度そのものは維持されたままだ。

なお、同じ枠組みで規制されているゲルマニウムについては、今回のような対日輸出再開を裏づける公的な数字は確認できていない。ガリウムとゲルマニウムは同じ2023年8月の許可制導入から出発しているが、品目ごとに承認のペースが異なる可能性があり、両者を一括りにして「緩和」と判断するのは早計だろう。

中国は「止める・出す」を使い分ける構造

SEMICON.TODAYが指摘するように、2025年11月に発表された対米禁輸の一時停止や、10月に公表されたレアアース関連措置の一時停止(いずれも2026年11月まで)も、制度の撤廃ではなく運用の一時停止にすぎない。ガリウムの対日輸出再開も同じ文脈で捉えるべきで、承認を止めることも出すことも中国側の裁量に委ねられている構造は変わっていない。

価格は高止まり――規制前の約3倍水準で推移

国際相場を見ると、ガリウム価格は依然として高水準にある。日刊産業新聞によれば、2026年に入ってからガリウム価格は上昇基調が続き、前年末比で約3割高となるキロ685ドル前後の最高値圏で推移している。同紙は、米中対立の激化を背景に2026年の輸出規制運用がさらに厳格化し、許可のペースが鈍化したことが価格を押し上げていると分析する。日本向けについても、商社筋の話として、トン単位の輸出許可が下りたのは5月末までずれ込んだとされる。

2023年の規制導入前、ガリウムの国際価格はキロ240ドル前後だった水準から見れば、現在の685ドル前後は約2.9倍という計算になる。半導体材料としてガリウムを使う化合物半導体メーカーにとって、この水準の高止まりは一時的なコスト増ではなく、事業計画に織り込むべき構造的な原価上昇として定着しつつある。

価格が下がらない理由は複合的だ。

  • 輸出許可制によって供給量そのものが安定しない
  • 中国側がガリウムを戦略資源として運用する姿勢を崩していない
  • 代替調達先(ロシア、ドイツ、カナダなど)のコストが相対的に高い
  • AIデータセンター向け光半導体などで実需自体も拡大している

こうした要因が重なり、供給が細切れに戻っても価格が規制前の水準に戻る気配は乏しい。

通報制度の強化で「迂回輸出」の摘発網が拡大

2026年に入って新たに動いたのが、輸出管理の実効性を高めるための通報・摘発体制の強化である。中国商務部は2026年6月24日付で公告第26号を発布し、戦略鉱物のデュアルユース品目に関する違法・違反行為の通報処理の仕組みを整備すると発表、2026年7月1日から施行された。Lexologyの分析によれば、この措置はレアアース・アンチモン・ガリウム・ゲルマニウム・タングステンといった主要戦略資源の輸出監督を、これまでの税関による境界での抜き取り検査から、社会的な監視力を組み合わせた「サプライチェーン全体のネットワーク型監視」へと引き上げるものだと位置づけられている。

制度強化の背景には、第三国での積み替えや品名の偽装といった手口による密輸事案の増加がある。同記事は、2025年に深セン市の裁判所で判決が出たアンチモン166トンの密輸事件(主犯に懲役12年の判決)を、当局が監視体制の隙を痛感した象徴的な事例として挙げている。

国際ビジネス情報「貿易情報便」によれば、この通報制度で対象となる行為は、無許可輸出、技術移転、第三国経由の迂回輸出、非規制品目への改造、外国政府による無断の実地調査受諾など多岐にわたる。特徴的なのは、国外の企業や個人もこの通報制度の対象に含まれる点で、実名で通報した者には報奨金が支給される仕組みも用意されている。

これにより、これまで一部で利用されてきた第三国経由の迂回輸出や品名偽装といった「抜け道」は、監視網の目が細かくなることでリスクが高まった。制度上の許可枠が広がらない一方で摘発リスクだけが上がる状況は、企業側のコンプライアンス対応をこれまで以上に重くする方向に作用するとみられる。

光半導体・CPOサプライチェーンへの影響は継続

ガリウムはヒ化ガリウム(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)として、光通信用レーザーやパワー半導体、AIデータセンター向けのCPO(Co-Packaged Optics、光電融合)光源に不可欠な基幹材料である。当サイトで別稿(下記関連記事)に詳述したとおり、日本はGaAs基板加工で世界シェアの約4割、GaN基板では約96%を担っており、価格高騰や供給の不安定さは川上の基板メーカーから川下のCPOモジュールまで連鎖的に波及する構造にある。

TSMCが進めるシリコンフォトニクスベースのCPO技術「COUPE」自体はシリコンウェーハへの依存度が高いものの、外部レーザー光源としてGaAs系またはInP系のデバイスを必要とする点は変わらない。

CPOの量産立ち上げが本格化するタイミングとガリウム規制の厳格化が重なっていることは、サプライチェーン全体にとって無視できないリスク要因であり続けている。

IEAが警鐘:規制が全面実施されれば6.5兆ドル規模のリスク

国際機関による評価も、供給リスクが構造的であることを裏づける。国際エネルギー機関(IEA)は2026年7月に公表した「Global Critical Minerals Outlook 2026」で、中国の輸出管理措置が全面的に実施された場合、中国域外での年間生産額のうち推計6.5兆ドル相当が影響を受けうると警告した。同報告書は、ガリウム磁石用レアアースイットリウム黒鉛タングステンテルルコバルトゲルマニウムを、供給集中度の高さと代替材料の乏しさから、供給リスクが特に高い鉱物群として挙げている。

同報告書はまた、欧州市場でのガリウム価格が中国国内価格の約5倍、ゲルマニウムも約3倍の水準まで開いていると指摘しており、輸出管理によって同一の資源が「国内向け」と「輸出向け」で分断され、域外の需要家が構造的に割高な価格を強いられる状態が定着していることを示している。

2025年10月に発表された拡大版の規制措置は2026年11月まで一時停止されているが、IEAは停止措置があっても脆弱性そのものは解消されていないと注意を促している。黒鉛(EVバッテリー材料)を含む他の重要鉱物についても同様の一時停止措置が取られており、期限が到来する2026年後半以降に規制が再強化される可能性は排除できない。

まとめ:緩和ではなく「温存された圧力」

2026年7月時点の状況を整理すると、次のようになる。

  • ガリウムは対日輸出が一部再開したが、許可制そのものは維持されている
  • 国際価格は規制前の約3倍、キロ685ドル前後で高止まり
  • ゲルマニウムについては同様の再開を裏づける情報が確認できない
  • 2026年7月1日から通報制度が強化され、迂回輸出のリスクが高まった
  • 光半導体・CPOサプライチェーンは供給不安を抱えたまま
  • IEAは規制の全面実施で6.5兆ドル規模の経済的リスクがあると試算
  • 2026年後半〜2027年にかけて、一時停止中の各種措置が再強化される可能性が残る

中国の輸出管理は、供給を「止める」ことと「出す」ことを状況に応じて使い分ける外交カードとして機能し続けている。今回のガリウム対日輸出再開も、規制解除ではなく運用上の裁量の一環と見るのが妥当だろう。日本企業には、規制がいつでも再強化されうるという前提に立った調達戦略――代替供給源の確保、在庫バッファーの積み増し、そして通報制度強化を踏まえたコンプライアンス体制の再点検――が引き続き求められる局面が続いている。

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