中国の半導体製造装置国産化が進むなか、SMICが中国製の液浸DUV露光装置を実際の生産ラインで評価していることが注目されています。ただし、現時点では先端ロジックの量産主力装置ではなく、性能や信頼性を検証する装置認定(qualification)段階です。
本記事では、SMICで進む中国製DUVの評価状況と28nm液浸DUVの技術課題を整理し、ASML製露光装置の代替につながるのか、中国製DUVが量産採用される可能性を分析します。
SMICでの稼働状況
報道によると、上海の装置メーカー宇量昇(Yuliangsheng)が共同開発した中国製の先端DUV露光装置が、SMICを含む中国の半導体メーカー、およびHuaweiの自社生産ラインでテストされている。最終的な用途は先端AIチップを見据えるものの、現在はまず比較的複雑度の低い半導体で評価を進め、装置性能の改善を行っているという。
ここで重要なのは、「テストされている」と「先端ノードで量産稼働している」を区別することである。前者は実ウエハを使った露光・プロセス統合評価を意味し得るが、後者には高い稼働率、重ね合わせ精度、寸法均一性、欠陥制御、保守性、そして安定歩留まりが必要となる。
現時点で、中国製DUVがSMICの7nm級量産ラインの主力装置になったと裏付ける公開情報は見当たらない。
生産台数は初期段階
宇量昇は2026年末までに12台のDUV装置を生産する計画と報じられている。一方、別の報道では、国有系の上海愛昇娜(Shanghai Aishengna)が、宇量昇および上海微電子装備(SMEE)の人材・技術基盤も取り込みながら、2026年に約5台、2027年に約20台を目標とする取り組みを主導しているとされる。
数値には「宇量昇個別の計画」と「複数組織を含む量産計画」が混在する可能性があるため、単純な累計として読むのは避けるべきだろう。ただし、いずれにしても2026年は大量導入ではなく、数台から十数台規模の立ち上げ・顧客認定フェーズと整理できる。
技術的な焦点
液浸DUV露光装置の実用性は、単純に「28nmを解像できるか」だけでは決まらない。SMICが先端ロジックで使うためには、特に以下の項目をクリアする必要がある。
- オーバーレイ精度:多重露光では各層のパターン位置を極めて正確に重ねる必要がある
- CDU(Critical Dimension Uniformity):ウエハ全面で線幅やスペースのばらつきを抑える必要がある
- スループットと稼働率:露光性能だけでなく、量産時の処理能力、停止頻度、復旧時間が重要となる
- 欠陥・汚染制御:先端プロセスでは微小な欠陥が歩留まりに直結する
- プロセス統合:レジスト、現像、エッチング、計測・検査と組み合わせ、再現性ある工程を構築しなければならない
特に7nm級以下をEUVなしで狙う場合、液浸DUVとマルチパターニングを組み合わせるため、工程数とマスク数が増える。露光装置単体の解像力だけでなく、オーバーレイ、サイクルタイム、欠陥密度、総製造コストのすべてが量産適用の制約条件になる。
海外部材依存が残る
国産化の進展はあるものの、光学・光源では海外技術への依存がなお課題とされる。宇量昇のプロトタイプには、投影レンズや光源など一部で海外由来の部材が使われている可能性が指摘されており、中国勢はこれらのボトルネックを埋めるための投資を強めている。
Huaweiの投資部門である哈勃投資(Habo Investment)やHuawei系ファンドは、超精密光学の福建至期光子(Fujian Zhiqi Photonics)や、DUV光源を開発する北京RSLaser Opto-Electronicsなどを支援しているとされる。
SMEEは2026年のSEMICON Chinaで、RSLaserの高出力レーザー光源を用いる28nm液浸DUV装置が顧客認定の最終段階にあると説明したと報じられた。
SMICへの意味合い
SMICにとって国産DUVの評価は、ASML製装置を短期間で全面代替する施策というより、輸出規制リスクに備えた第二の供給源の育成である。先端ファブでは依然としてASML装置への依存が大きく、中国市場はASMLにとっても重要市場であり続けている。ASMLの2026年第2四半期のシステム販売では、出荷先ベースで中国が14%を占めたと報じられている。
短期的には、国産液浸DUVは成熟ノード、特殊用途プロセス、あるいは先端ラインの非クリティカル層から採用が広がる可能性が高い。その後、SMICでの装置認定データが蓄積され、稼働率・オーバーレイ・欠陥率・歩留まりが実証されれば、より重要な層や高難度のマルチパターニング工程へ適用範囲が拡大するだろう。
今後の注目点
今後の進展を見極める上では、以下の4点が重要になる。
- SMICが中国製液浸DUVをどのノード・どの層で採用するか
- 28nm液浸DUVの顧客認定が、実際の量産受注・継続出荷へ移行するか
- 2026年末の12台計画、2027年の約20台計画が実際に達成されるか
- 投影レンズ、ArF光源、計測・検査、レジストなど周辺サプライチェーンの国産化率がどこまで高まるか
現段階では「中国製DUVがSMICで動き始めた」こと自体が戦略的な転換点である。一方、先端ロジック量産の競争力を左右するのは、装置の試験導入ではなく、長期連続稼働と歩留まりを伴う量産実績である。
参考記事
- TrendForce(2026年9月8日)Huawei Reportedly Backs China’s DUV Drive, with 12 Systems Targeted by End-2026; SMIC Testing Underway
- 【2026年版特集】中国SMICのロジック7nm技術とHuawei国産EUV開発を網羅解説する最新動向レポート
【著者】EXA-Technologies
半導体コンサルタント(半導体設計・信頼性・市場分析・営業支援)
日本、台湾の大手半導体企業での勤務経験。現在は、台湾・日本を行き来しながら、現場のリアルを伝えています。


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