DeepSeek V4公開で中国大手がHUAWEI AIチップを争奪─中国製HBMでNVIDIA依存から脱却へ向かう中国

Kirin-9000X-HiSilicon 中国ニュース

×2.87
vs NVIDIA H20(FP4性能比)
75万
2026年出荷計画台数
$56億
ByteDance発注額(史上最大)
112GB
自社HBM(HiBL 1.0)容量

 中国・HUAWEI(ファーウェイ)が投入した最新AI推論チップ「Ascend 950PR」が、中国テクノロジー業界に激震をもたらしている。DeepSeek V4のリリースとの相乗効果で、ByteDance・Alibaba・Tencenなど中国を代表するインターネット大企業が競うように大型発注へ動き出し、長年続いてきたNVIDIA依存からの脱却が現実味を帯びてきた。

DeepSeek V4が点火した「需要爆発」

ロイター通信が複数の関係者への取材で報じたところによると、2026年4月末のDeepSeek V4リリースを機に、ファーウェイのAscend 950シリーズへの需要が急騰した。ByteDance、Tencent、Alibaba をはじめ、クラウドコンピューティング企業やGPUレンタルサービス事業者まで、新たなチップ発注についてHUAWEIに相次ぎ打診しているという。

▌ HUAWEI の戦略的転換点

DeepSeekがV4をファーウェイ製チップ向けに最適化したことは、米国製半導体から中国製ハードウェアへの移行を象徴する歴史的な転換点だ。HUAWEIはAscend SuperNodeプロダクトライン全体がDeepSeek V4の推論処理(インファレンス)に対応済みであることを即座に公表した。

Alibaba CloudのBailianプラットフォームはV4リリース当日に即日公開。Tencent CloudもTokenHubプラットフォームで同日プレビューサービスを開始し、シンガポールの国際ゲートウェイからグローバルユーザーへも提供している。こうした大手クラウドの素早い展開により、処理が必要なAIクエリ量が急増し、基盤チップへの需要もさらに拡大した。

▶ DeepSeek V4 概要
V4-Pro 1.6兆パラメータ、最大100万トークンコンテキスト対応
V4-Flash 2,840億パラメータ、同コンテキスト対応
ライセンス MIT Open Source(商用利用・改変・再配布自由)
キャンペーン 2026年5月5日まで75%割引実施中
価格見通し HUAWEI Ascend 950量産化(2026年後半)後に大幅低下の見込み

HUAWEI Ascend 950PRの実力:スペックと技術的優位性

Ascend 950PRは2026年3月20日、「中国パートナーカンファレンス2026」においてAtlas 350アクセラレータカードとともに正式デビューを飾った。プリフィル処理やレコメンデーションアルゴリズムなど計算負荷が高いAI推論ワークロードに最適化されており、前世代比で大幅な性能向上を実現している。

▶ HUAWEI Ascend 950PR 主要スペック
演算性能 1.56 PFLOPS(FP4精度)
HBM容量 112GB(HiBL 1.0 / HUAWEI自社開発)
メモリ帯域 1.4 TB/s
消費電力 600W(H20比 約1.5倍)
vs NVIDIA H20 HBM容量1.16倍、マルチモーダル生成速度最大60%向上
低精度フォーマット FP4ネイティブサポート(中国製チップ初)
製造プロセス SMIC 7nm DUV(多重パターニング)
搭載カード Atlas 350

特筆すべきは、HUAWEIが独自開発したHBM技術「HiBL 1.0」の搭載だ。前世代比で相互接続帯域幅が2.5倍に向上し、韓国・米国のメモリ大手(SK Hynix・Micron)への依存から脱却。中国製チップとして初めてFP4(低精度浮動小数点演算)をネイティブサポートし、単位時間あたりの演算量を低コストで大幅に引き上げることにも成功している。

NVIDIAとの比較:圧倒的な優位と残る課題

950PRの立ち位置を整理するため、競合製品と比較する。中国で唯一販売が許可されていたNVIDIA H20に対し、950PRはFP4精度で約2.87倍の演算性能を誇る。一方、NVIDIA最高峰のBlackwellアーキテクチャとは、特にメモリ帯域幅やトレーニングワークロードで依然として1世代の差がある。

チップ HBM容量 帯域幅 中国販売 参考価格
Ascend 950PR HUAWEI 112GB 最大 1.4 TB/s ○ 販売中 約70,000元(HBM版)
H20 NVIDIA 96GB 3.35 TB/s △ 制限中 $14,000〜
H200 NVIDIA 141GB 4.8 TB/s ✕ 出荷停止 $25,000〜$40,000
B200 Blackwell NVIDIA 192GB 8.0 TB/s ✕ 輸出禁止 非公開

「チップ単体で見れば、HUAWEIはNVIDIAの3年前の水準にほぼ追いついた。真の問題は、Blackwellとの差を縮められるか、そしてソフトウェアエコシステムがCUDAの成熟度に匹敵できるかだ。ハードウェアは印象的だが、ソフトウェアの物語が採用の可否を決める。」

— Stacy Rasgon(バーンスタイン・リサーチ、半導体アナリスト)

CUDA互換「CANN Next」が最後の砦を崩す

NVIDIAの長年の競争優位性は優れたハードウェアだけでなく、CUDAソフトウェアエコシステムによる「乗り換えコスト」にあった。中国のAIラボは大量のコードをCUDA向けに最適化しており、別のハードウェアへの移行は事実上、数百万行ものコードの書き直しを意味していた。

▌ HUAWEI CANN Next 戦略

HUAWEIが開発した「CANN Next」ソフトウェアスタックはCUDA互換の翻訳レイヤーを備えており、標準的なCUDA APIの大部分をカバーする。NVIDIAのCUDAロックインは「戦略的な参入障壁」から「管理可能な移行プロジェクト」へと格下げされた。DeepSeek V4のトレーニングにはAscend 950Bが、推論にはAscend 950PRが使用されており、エンドツーエンドの完全国産AIコンピューティング基盤が事実上完成した。

中国大手が殺到:ByteDance 56億ドルの衝撃

最も市場を驚かせているのが、ByteDanceによる56億ドル超という巨額の発注だ。中国の国内チップメーカーへの単一発注としては史上最大規模とされる。1チップ約16,000ドルで計算すると約35万チップに相当し、HUAWEIの2026年全生産目標の約46%を占める。ByteDanceは単なる顧客ではなく、国内チップスタックの製造拡大を実質的に共同資金援助している構図だ。

業界筋によれば、中国大手クラウド事業者全体のAscendチップへの総需要は2026年だけで120〜150億ドルに達する可能性があるという。Alibaba Cloud、Tencent、Baiduも大型発注を確定・検討中だ。

⚠ 輸出規制がもたらした「逆説」

Albright Stonebridge GroupのPaul Triolo氏が指摘するように、米国の輸出規制は皮肉にも中国の半導体自立への投資を加速させた。「950PRはNVIDIAの最高峰には及ばないが、3年前に誰もが予想した水準をはるかに超えている」。

HUAWEI 半導体ロードマップ:2028年に向けて

950PRの登場は一過性のニュースではなく、2025年9月に公表された「2028年に向けた3カ年AIチップロードマップ」の第一弾だ。

  • 2026 Q1 ▶ 現在
    Ascend 950PR
    推論・プリフィル最適化。自社開発HBM(HiBL 1.0)搭載。外部販売開始。
  • 2026 Q4
    Ascend 950DT
    推論デコード性能強化。トレーニング性能向上と大容量メモリ対応。
  • 2027 Q4
    Ascend 960
    次世代AIアーキテクチャ。詳細未公開。
  • 2028 Q4
    Ascend 970
    HUAWEIロードマップの最終目標チップ。

供給制約と市場二極化:今後の展望

HUAWEIは2026年に75万ユニットの950PR出荷を計画しているが、米国の輸出規制によりEUVリソグラフィ非対応のSMIC 7nmプロセスに製造が限られており、大規模量産は2026年後半からの見通しだ。TrendForceの4月レポートでは、Alibaba・Tencent・Baiduが2026年3〜4月に一斉にAIコンピュート料金を値上げしており、現在進行形の供給不足を示すシグナルとなっている。

「ByteDanceが56億ドルをHUAWEIに投じるのは、単なる調達上の意思決定ではない。中国最大のAI企業たちが、自国シリコン上に未来のインフラを構築するという宣言だ。NVIDIAへの依存は体系的に縮小されつつある。」

— Chris Miller(タフツ大学准教授、”Chip War” 著者)

グローバルAI半導体市場の「西側 vs 中国」という二極化は、HUAWEIの量産フェーズが本格化する2026年後半以降にさらに加速するだろう。データセンターの設計・冷却仕様・テナント構成まで、二つのエコシステムは今後ますます乖離していく。HUAWEI Ascend 950PRがその分岐点となった——歴史はそう記録するかもしれない。

参考情報源:
※本記事は複数の英語メディアおよびデータソースをもとに再構成したものです。
ファーウェイ新型AI半導体「950PR」衝撃の最新動向|HBM自社開発でNVIDIA依存崩壊、中国大手企業が大量採用へ市場激震
・ロイター: ファーウェイ新型AI半導体、大手テック企業が発注へ
・ロイター Exclusive: Big Chinese tech firms scramble to secure Huawei AI chips after DeepSeek V4 launch
・CNBC: Huawei’s new AI chip finds favor with ByteDance, Alibaba which plan to place orders
・TECH WIRE ASIA: DeepSeek V4 points to growing use of Huawei chips in AI models
・Yahoo Finance: Alibaba Orders Huawei AI Chips As Valuation Gap Draws Investor Focus
・Yahoo Finance: Tencent Chip Orders With Huawei Reshape AI Supply And Investor Focus
・TECH IN ASIA: Huawei’s new AI chip draws orders from ByteDance, Alibaba
・EET CHINA: 首发自研HBM内存!华为昇腾950/960/970芯片全公布,全球最强超节点来了

コメント

タイトルとURLをコピーしました